鳩山首相が、共産党の「内部留保課税」の提案に対して、前向きに検討すると答えたことが波紋を呼んでいる。支持率の低下に苦しむ鳩山内閣は、いよいよ共産党と手を組むのだろうか。
共産党の提案は磯崎さんも指摘するように単純なナンセンスで、企業に「内部留保」という現金がうなっているわけではない。しかし問題は内部留保のうち預金が異常に多いことで、世界中で企業部門が貯蓄超過になっているのは日本だけだ。企業というのは、借り入れによって設備投資を行ない、そのリターンで借金を返すシステムだから、企業の貯蓄が借り入れを上回るというのは異常な状態で、企業活動が実質的に収縮していることを意味する。
企業の配当が多すぎるという藤末健三氏の議論は、分母が間違っている。GDP比でみると日本の配当は3.5%と、利益の規模が同程度のドイツに比べても1/4である。藤末氏の主張とは逆に、日本の企業は株主を軽視して利益を彼らに還元せず、貯蓄に励んでいるのだ。脇田成氏も指摘するように、デフレの最大の原因はこのように企業が金を借りない(貸している!)ことで、この状態でいくら通貨供給を増やしても銀行貸し出しが増えるはずがない。
その原因は諸説あるが、一つはバブル崩壊後に行なわれた過剰債務の解消が、その後もずっと続き、それがトラウマになって「無借金経営」をめざす企業が増えていることだろう。もう一つの理由は、経済が停滞して投資機会が減るとともに、過剰コンプライアンスによってリスクが取りにくくなり、企業のアニマルスピリッツが低下していることだと思われる。
この対策としては、磯崎さんの提案するように、預金に課税するというのが一案だが、これは政治的に実現するとは思えないので、同じ効果をもたらす方法として投資減税がありうる。これも環境関連など裁量的に実施しないで、設備投資に一律に軽減税率を適用するほうがいい。法人税の引き下げも必要だが、企業が利益をため込む傾向が変わらないかぎり、投資不足を是正する効果は限定的だ。
根本的な問題はアニマルスピリッツが衰退していることで、こればかりは税制ではどうしようもない。ただ「市場原理主義」を指弾して企業への課税を強化しようとする首相の共産主義的な言動が、企業をさらに弱気にすることは確実だ。「内部留保課税」なんかやったら、大企業は海外逃避して投資はさらに細り、そのしわ寄せはもっとも弱い人々に行くということが、首相のような金の苦労を知らない人にはわからないのだろう。
舛添要一氏などが「小泉改革の継承」をとなえて新グループを結成したことは、この状況を変えるきっかけになるかもしれない。舛添氏自身は、必ずしも「小さな政府」派ではなく、厚労相だったころは派遣労働規制の旗を振ったりしていたが、少なくとも次の選挙で生き残るには「大きな政府」では危ないと気づくぐらい目先はきくのだろう。
共産党の提案は磯崎さんも指摘するように単純なナンセンスで、企業に「内部留保」という現金がうなっているわけではない。しかし問題は内部留保のうち預金が異常に多いことで、世界中で企業部門が貯蓄超過になっているのは日本だけだ。企業というのは、借り入れによって設備投資を行ない、そのリターンで借金を返すシステムだから、企業の貯蓄が借り入れを上回るというのは異常な状態で、企業活動が実質的に収縮していることを意味する。
企業の配当が多すぎるという藤末健三氏の議論は、分母が間違っている。GDP比でみると日本の配当は3.5%と、利益の規模が同程度のドイツに比べても1/4である。藤末氏の主張とは逆に、日本の企業は株主を軽視して利益を彼らに還元せず、貯蓄に励んでいるのだ。脇田成氏も指摘するように、デフレの最大の原因はこのように企業が金を借りない(貸している!)ことで、この状態でいくら通貨供給を増やしても銀行貸し出しが増えるはずがない。
その原因は諸説あるが、一つはバブル崩壊後に行なわれた過剰債務の解消が、その後もずっと続き、それがトラウマになって「無借金経営」をめざす企業が増えていることだろう。もう一つの理由は、経済が停滞して投資機会が減るとともに、過剰コンプライアンスによってリスクが取りにくくなり、企業のアニマルスピリッツが低下していることだと思われる。
この対策としては、磯崎さんの提案するように、預金に課税するというのが一案だが、これは政治的に実現するとは思えないので、同じ効果をもたらす方法として投資減税がありうる。これも環境関連など裁量的に実施しないで、設備投資に一律に軽減税率を適用するほうがいい。法人税の引き下げも必要だが、企業が利益をため込む傾向が変わらないかぎり、投資不足を是正する効果は限定的だ。
根本的な問題はアニマルスピリッツが衰退していることで、こればかりは税制ではどうしようもない。ただ「市場原理主義」を指弾して企業への課税を強化しようとする首相の共産主義的な言動が、企業をさらに弱気にすることは確実だ。「内部留保課税」なんかやったら、大企業は海外逃避して投資はさらに細り、そのしわ寄せはもっとも弱い人々に行くということが、首相のような金の苦労を知らない人にはわからないのだろう。
舛添要一氏などが「小泉改革の継承」をとなえて新グループを結成したことは、この状況を変えるきっかけになるかもしれない。舛添氏自身は、必ずしも「小さな政府」派ではなく、厚労相だったころは派遣労働規制の旗を振ったりしていたが、少なくとも次の選挙で生き残るには「大きな政府」では危ないと気づくぐらい目先はきくのだろう。