ブログマガジン

NYTの安倍首相についての報道は歪んでいる


NYTのファクラー東京支局長は、古賀茂明氏が報道ステーションから降ろされたことを「安倍政権の圧力だ」と報じているが、その根拠を何一つ示していない。彼は安倍政権が朝日グループを攻撃していると書いているが、これは逆である。一連の騒ぎの発端は、昨年8月に朝日新聞が慰安婦問題についての大誤報を「自白」したことに始まるのだ。
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EPUBリーダーは何がいいか

今月からメルマガをブログマガジンとしてEPUBで配信することにしたが、リーダーがいろいろあるので試してみた。みなさんも、次のサンプルで試してみてください。

池田信夫ブログマガジン(β版)

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財政危機とは社会保障の危機である


きのうのアゴラ政治塾では、鈴木亘氏(学習院大学)をゲストに招いて社会保障について話し合った。これについては「言論アリーナ」でも何度もテーマにしたので経済学的な問題は省略したが、政治塾で出てきた(既知の)話を補足しておこう。

続きはアゴラで。

高齢者を保護して休業要請を中止せよ



もう新型コロナの感染は峠を越したといっていいだろう。5月11日現在の日本のコロナ死者は643人。これをアメリカの8万3000人、イギリスの3万3000人と比べるだけで、どこの国が成功したかは明らかだ。14日に政府は緊急事態宣言を見直す予定だが、東京都・大阪府など13の「特定警戒都道府県」以外は、原則として解除する方向らしい。

続きはアゴラで。

アナーキズムは「相互扶助」の思想

相互扶助論: 進化の一要因
クロポトキンは、日本ではロシアのあやしげなアナーキストぐらいにしか思われていないだろう。本書の訳者だった大杉栄は、憲兵に殺害された。訳本も大杉訳しかなかったが、このほど新訳が出た。

本書は政治的なアナーキズムを語るものではなく、進化論の批判である。ダーウィンは進化を個体レベルの「生存競争」と考えたが、これでは社会性昆虫などの協力を説明できない。動物には個体保存と並んで相互扶助の本能があるというのがクロポトキンの仮説である。これは現在の生物学の集団淘汰の理論と同じだ。

おもしろいのは人間社会の進化についての考察で、デヴィッド・グレーバーが序文で高く評価している。中世までの社会の原理は相互扶助で、ヨーロッパの都市は民会や法廷や行政機構をもつアソシエーションだった。村落共同体のような地縁集団とギルドのような職能集団の自治で中世の社会は成り立っていた。

それを破壊したのがフランス革命だった。ヨーロッパ各地で「近代国家」によって共有地が強制収用され、都市が破壊された。その後の戦争と革命で中世のアソシエーションは消滅したようにみえるが、それは20世紀にも残っている。続きを読む

日銀の書いた「西浦論文」の反実仮想パラレルワールド

黒田日銀の実績を評価する「レビュー」の素材として日銀が書いた論文「非伝統的金融政策の効果と副作用」が話題になっている。そのポイントは次の通り。
国債のイールドカーブ全体の情報を集約した潜在金利を政策代理変数として FAVAR モデルを推計し、反実仮想分析を行った結果、わが国の一連の非伝統的金融政策は、生産や物価に対して一定の押し上げ効果があったこと、また特に QQE 以降の大規模な金融緩和はデフレではない状況を作り出すことに寄与したことが示された。

これが金融クラスタで、お笑いネタになっている。


この論文は、日銀が何もしなかったら発生したはずの潜在金利を考える。これはざっくりいうと「自然利子率+インフレ率」つまり「名目中立金利」と考えていいが、自然利子率がマイナスの場合はゼロ金利制約で見えない。

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図1

潜在金利は図1のように最大マイナス4%になったと想定されるが、これは仮想の金利だから企業には見えない。したがって企業が潜在金利にもとづいて行動することもありえない。

ところがこの「反実仮想分析」では、見えない潜在金利にもとづいて企業が行動したらどうなるかをシミュレーションしているのだ。これは「何もしなかったら42万人死ぬ」でお笑いネタになった西浦博氏の論文と同じパラレルワールドのお伽話である。
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ウクライナ戦争の突然の終わり

アメリカのトランプ大統領は19日、Xに次のような投稿をした。


ウクライナのゼレンスキー大統領は戦争を開始してアメリカに3500億ドルの支出をさせた。アメリカはヨーロッパより 2000億ドルも多く 負担しているが、見返りはない。

ゼレンスキーは選挙を実施せず、ウクライナ国内で支持率が低下している。アメリカからの支援金の 半分が行方不明 になっている。バイデンを「手玉に取っている」ゼレンスキーは独裁者だ。

トランプがウクライナをプーチンに売り渡すことは予想されていたが、これほどあからさまな形でプーチンの言い分を丸のみし、ウクライナに全面的な譲歩を求めるとは思わなかった。ロシアには何の譲歩も求めず、いま占領しているウクライナ東部をロシアの領土にする形で停戦するのだろう。

このような全面的譲歩が何をもたらすかは、1938年のミュンヘン会談で歴史の教訓となっている。100点満点の結果を得たプーチンは、トランプのいるうちにウクライナに傀儡政権をつくって全土をロシアの領土としようと考えるだろう。

続きは2月24日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

GAFAMのグローバル独占は「テクノ封建制」か

テクノ封建制 デジタル空間の領主たちが私たち農奴を支配する とんでもなく醜くて、不公平な経済の話。(集英社シリーズ・コモン) (集英社学芸単行本)
資本主義が「新しい中世」に向かっているというのは新しい話ではない。田中明彦『新しい中世』は主権国家中心の国際秩序がインターネットで掘り崩され、国境を超えるグローバル資本主義が生まれていると述べた。

本書も似たような認識から始まるが、それをテクノ封建制と呼ぶ。なぜそれが資本主義ではなく封建制なのか、という問題についての答は曖昧だ。資本主義の原理が利潤なのに対して、封建領主が取るのはレント(地代)だというが、資本主義にもレントはある。

GAFAMのような独占企業の利潤は独占レントだから、競争的な利潤とは違って独占が続く限り消えない。このように企業集中度が高まる傾向は2000年代以降、世界共通に観察されている。それはインターネットがグローバルな規模の経済を実現したからだ。

電力や電話のような独占は物理的インフラに依存しているので独占は国内に限られるが、インターネットはインフラを選ばないので、グローバルな独占が可能になる。たとえばアマゾンの固定費用(技術開発費)はユーザーが増えても一定なので、世界にユーザーが増えれば増えるほど限界費用(単価)は小さくなり、最適規模は無限大になるのだ。

続きは2月24日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

アメリカ社会の格差を拡大したのはグローバルな独占

競争なきアメリカ――自由市場を再起動する経済学
トランプ関税は支離滅裂だが、彼が見ているのは重要な問題である。アメリカの成長率は高く、平均所得は上がっているが、格差は拡大した。トランプ政権の中心、イーロン・マスクの資産は3300~3700億ドルで世界一、ラトニック商務長官は20~40億ドル、ベッセント財務長官は7~13億ドルと推定されている。

このような富の集中は最近の現象である。図のように2000年にはトップ10%の資産はGDPの約60%だったが、2019年には72%になった。これを逆転し、アメリカを「再工業化」しようというのがトランプ政権の発想だが、それは時代錯誤である。

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富の分配の推移(Business Insiderより)

グローバリゼーションで世界の格差は縮小し、最貧層の人口は大きく減った。それを逆転することはできないが、格差は自然現象ではない。その一つの原因はここ20年の上位企業の独占度の増加である。これによって利潤率が上がり、上位企業のシェアが高まった。

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企業集中度の推移(本書より)

これは全業種に見られる現象で、その原因はレーガン政権以来の新自由主義である。独占企業を規制するのではなく、新規参入の余地があればよいとするシカゴ学派の独禁政策が主流になり、マイクロソフト訴訟のような独禁訴訟で司法省が敗れた。

インターネットと規制緩和が独占を促進した

もう一つはテクノロジーの変化である。特にインターネット企業では国内シェアは無意味になり、GAFAMのようなグローバル独占企業が生まれた。ここでは固定費はソフトウェアなので、多くのユーザーが使えば使うほど平均費用が下がる費用逓減が起こり、最適規模は無限大になる。

ITの急速な発達で大きく変化したのが金融である。昔の銀行は預金者の金を融資するだけだったが、1990年代以降は国際資本移動の規制緩和で、余剰資金をグローバルに運用する投資ファンドが増え、トレーダーの所得は大きく上がった。

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金融部門の規制と賃金(本書より)

このようにインターネットと規制緩和でIT産業や金融のような知識集約型産業に富が集中したことがアメリカが成長した原因であり、また格差の拡大した要因でもある。ヨーロッパはアメリカほど規制緩和が進まなかったために格差は拡大しなかったが、成長もしなかった。

これをどうすべきかはむずかしい問題である。トランプ政権ではマスクがDOGE(政府効率化省)で急激な規制撤廃を進めているが、規制がなくなると競争が起こるとは限らない。資本力にまさる独占企業が新企業を排除したり買収したりするからだ。企業買収の規制は強化することが望ましい。

こうした変化の原因はグローバリゼーションだが、それが格差を拡大するのはスキルバイアス技術進歩(SBTC)のためだ。これは技術と補完的なスキルをもつ(SEのような)労働者の賃金が上がり、技術に代替される単純労働者の賃金が下がる現象だが、今後AIで情報技術が高度化すると、この格差はますます拡大するだろう。


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