経済

日本でも原則は「解雇自由」である(アーカイブ記事)

日本経済の長期停滞の最大の原因が労働市場にあるとの認識は、最近多くの人に共有されるようになり、解雇規制を緩和すべきだという意見がようやく公に議論されるようになった。

しかし実は、法律上の解雇の制限という意味では、日本の解雇規制はそれほど厳格ではなく、OECDの基準でも平均よりややゆるやかである。民法では、契約自由の原則で一方の当事者が申し出れば雇用契約は終了するので、解雇は自由である。

労働基準法では「30日の予告」を定め、組合活動などによる不当解雇を禁止しているぐらいだが、労働契約法16条では解雇権濫用法理が明文化された。これがほぼ唯一の実定法による解雇権の制限である。

最大の問題は、判例で整理解雇が事実上、禁止されていることだ。特に整理解雇の4要件が労基法と同等の拘束力をもっているので、事業部門を閉鎖するまで解雇できない。

大企業の人事部はそれを知っているから、指名解雇はしないで「肩たたき」で希望退職させる。これは解雇ではなく自己都合退職なので解雇規制とは関係ないが、他社でつぶしのきく人から退職し、やめさせたい人は残ってしまう。続きを読む

金融村が「国債バブル」を守って財政を維持してきた

自民党総裁選では財政タカ派かハト派かが争点の一つだが、これは大した問題ではない。今の日本で財政破綻が起こる可能性はないからだ。そもそも統合政府のバランスシートでみると、日本政府はすでに696兆円の債務超過である。日銀の債務超過どころではない。


統合政府のバランスシート(桜内文城氏)

しかし国債をあわてて売る人はなく、長期金利は1%弱である。それは投資家が日本政府を信用しているからだ。これは自明ではない。トルコ政府のように信用がないと、金利を50%にしても国債が売れない。

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「日銀の債務超過」で空騒ぎする人は日銀の迷惑

きのうの国会の閉会中審査は、植田総裁がジャクソンホールを欠席して出席した割には不毛な会議だった。そもそも日経平均は暴落前の8月2日を上回っており、あれは一時的な相場のブレだった。

ところが「時期尚早だった」という議員がいる一方で、維新の藤巻健史議員は相変わらず「日銀の債務超過」について演説している(1:24~)。



マーケットでは誰も相手にしていないが、まず私のツイートを貼っておこう。


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創造的破壊は韓国に学べ

創造的破壊の力―資本主義を改革する22世紀の国富論
今年4月に公表されたIMFの世界経済見通しによれば、2024年の一人当たり名目GDPは日本が3万3138ドル、韓国が3万4165ドルで、韓国が日本を抜く見通しである。この一つの要因は急激な円安だが、ここ10年の成長率をみても逆転されるのは時間の問題だった。

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日韓台の名目GDP(IMF)

Economist誌でも世界銀行のチーフエコノミストが、韓国を中所得国の罠から脱却した国として賞賛している。これは発展途上国がキャッチアップで一定の経済レベルに達した段階で、独占維持や既得権保護で成長が止まってしまう現象をいう。

本書では、日本をその罠にはまった国として論じている。日本と韓国は、ほぼ同じ時期に深刻な経済危機を経験した。1990年代に日本では不動産バブルの崩壊による不良債権の処理に10年以上かかり、その間に世界ナンバーワンだった製造業は日本から逃げ出してしまった。

他方、韓国は1997年のアジア通貨危機で金融危機になり、IMFの資金援助を受けた。韓国人が「IMF時代」と呼ぶこの時期に財閥が解体されて失業者が激増したが、財閥企業をクビになった若者が起業し、空前の創造的破壊が起こったのだ。

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啓蒙された経済(アーカイブ記事)

The Enlightened Economy: An Economic History of Britain 1700-1850 (The New Economic History of Britain seri)産業革命は、一般には多くの発明によって経済が爆発的に成長した時期だと思われているが、最近の研究では18世紀のイギリスで初めて生まれた技術というのは少なく、成長率もそれほど高くなかった。

当時のイギリスに特徴的なのは、このようなイノベーションが長期にわたって続き、ビジネスに応用されたこと、そしてそれが奨励されたことである。これは当たり前のようだが、キリスト教では人間はアダムとイブの時代から堕落を続けており、社会が進歩するという思想は異端だった。

Innovationというのは非難の言葉であり、スコットランド啓蒙思想の中心人物ヒュームは、無神論者とみなされて一生アカデミックな地位を得られなかった。啓蒙は、神に代わって人間が自然をコントロールする思想だったからだ。

本書が強調するのは、イノベーションにとって重要なのは技術ではないということだ。技術だけなら同時代の中国(清)のほうがはるかに進んでいた。火薬も活版印刷も羅針盤も、中国で発明されたものだが、それは産業革命を起こさなかった。それはなぜだろうか。

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次の自民党総裁はアベノミクスを転換できるのか

岸田首相の突然の不出馬で、自民党総裁選が動き始めた。現役閣僚や党三役も手を上げ、最近まれに見る混戦である。


日本経済新聞

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日本がいまだに「デフレ」だと思っている政治家のための経済学

アゴラに珍しくリフレ派の記事が出ていると思ったら、自民党の長島昭久議員だった。今回の株暴落では、経済の専門家にはこういうコメントはなくなったが、いまだに政治家がこのレベルの認識だと困るので、超簡単に解説しておこう。


まず「デフレ脱却」の意味がわからない。デフレーションとは物価下落で、これ以外の意味はない。今年6月の消費者物価上昇率(コアCPI)は2.6%で、34ヶ月連続で日銀のインフレ目標2%を上回った。これは堂々たる物価上昇であり、デフレではない。

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黒田日銀の過剰流動性が100兆円の「円キャリートレード」を生んだ

今回の世界同時株安の発火点は日本である。アメリカにはこれといった材料はなかった。日銀の利上げのサプライズで円キャリートレードの巻き戻しが起こり、それによってアメリカ株が売られたのが原因だ。

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日経平均バブルの崩壊は大企業の「海外財テク」の終わり

日銀の利上げをきっかけに1ドル=143円まで円高になり、日経平均は2営業日で10%以上も下がったが、相場にはあまりパニック感はない。これは株式バブルの正常化と受け止められているからだ。

まず為替レートについては、たった0.15%ポイントの利上げで円が5%も上がったのは過剰反応だ。このように針の一刺しで風船がはじけるのは、バブル崩壊の典型的症状である。特に日経平均銘柄の下落率が大きい。


日経平均とTOPIX(Yahoo!ファイナンス)

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世界一賢い日本人を外資が雇わないのはなぜか

最近の円安の原因が産業空洞化だということは、多くの専門家のコンセンサスになりつつある。この空洞化を是正するには対内直接投資を増やす必要があるが、そのGDP比は約5%で、198ヶ国中の196位。北朝鮮より低いという驚くべき状況である。



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