経済

財政タカ派の逆襲が始まったが、財政再建の目標が的はずれ

自民党の裏金事件のゆくえは混沌としているが、今の段階で一つだけはっきりしていることがある:これまで質量ともに自民党の中心だった安倍派が解体され、第2次安倍政権以来の金融・財政バラマキ路線が終わることだ。その象徴的な出来事が、財政健全化推進本部の新体制である。



これまでも自民党内では財政タカ派の健全化本部と「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が併存していたが、安倍派を中心とする後者が圧倒的に優勢だった。それが今回の騒ぎで空中分解し、健全化本部の本部長が古川禎久、本部長が小渕優子、幹事長が青木一彦という茂木派からの脱藩組で占められた。

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統合政府は608兆円の債務超過

また高橋洋一氏が嘘を繰り返しているので、訂正しておこう。

これは一昨年の記事で私が指摘したことだが、そもそも彼のいうバランスシートは、資産と負債がバランスしておらず、BSになっていない。日本政府は、1661兆円も国債を発行していない。

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サラリーマンを搾取する「国民皆保険」というフィクション

「言論アリーナ」で、国民民主党の玉木さんと維新の音喜多さんと一緒に、いま話題の社会保険料について議論した。



日本社会の直面している最大の脅威は高齢化ではなく、そういう人口動態の大きな変化に制度が適応できず、いまだに高度成長期の若かった国のしくみを続けていることだ。その最たるものが、社会保障の国民皆保険である。日本のように全国民が強制加入の社会保険は世界に類を見ない。

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高齢化がなければ日本の成長率は世界最高?

日本経済が停滞している一つの原因が高齢化であることに疑問の余地はない。1990年を100とした実質GDP(購買力平価)でみると、図1のようにG7の中で日本の成長率はイタリアと並んで最下位である。

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図1 G7諸国の実質GDP

その大きな原因は人口が減っているためだが、一人あたりGDPでみても図2のように下から2番目だ。したがって日本の「失われた30年」の原因は高齢化だけではなく、労働生産性の低下や投資の減少などの構造的要因だと考えられている。

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図2 一人あたりGDP

しかしFernandez-Villaverde, Ventura & Yaoは、図3のようにGDPを生産年齢人口(15~64歳)で割ると、日本はG7の平均以上であることを発見して話題になった。日本の労働生産性は高いが、労働人口が減っているため、全人口で割るとGDPが低くなるというのだ。

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図3 生産年齢人口あたりGDP

日本の生産年齢人口あたり成長率はアメリカより高く、2010年代ではG7で最高だった。つまり日本は特殊ではなく、先進国の成長にとって最大の脅威は高齢化であり、それが最初に日本で起こっただけだというのだ。これは本当だろうか?続きを読む

一挙に15%賃上げするシンプルな方法

インフレがひどくなって実質賃金が下がり、政府も日銀も賃上げを求めているが、サラリーマンの賃金を最大15%上げる簡単な方法がある。社会保険料の事業主負担を廃止し、本人負担に一元化するのだ。

サラリーマンの給与明細を見ると、この例では課税対象となる総支給額22万円に対して、社会保険料の合計は3万145円で13.4%。40歳以上はこれに介護保険料1.73%が加わるので、総支給額に対する負担率は約15%だが、この総支給額には会社の払う事業主負担が含まれていない。


給与明細のサンプル(SBIマネープラザ)

事業主負担は本人負担と同じ約15%なので、社会保険料の算定基準となる報酬月額に対する保険料率は約30%である。これは会社としては人件費(法定福利費)なので、事業主負担がなければ労働者に払える賃金は増える。では事業主負担がなくなったら、会社はそれをすべて賃上げに当てるだろうか?

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アベノミクスの「意図せざる空洞化」が格差を拡大した

内閣府が発表した日本の一人あたりGDP(米ドルベース)がイタリアを下回ってG7で最低になったことが話題を呼んでいる。この最大の原因は円安だが、これをどうみるべきだろうか。



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社会保障の格差は資産格差である

社会保障の現状をみると「若者は老人より絶対的に貧しくなる」と悲観する人がいるが、そんなことはない。家計金融資産は2000兆円あり、マクロ経済的には技術進歩が続く限り成長し、子は遺産を相続できるので親より豊かになる。賦課方式の年金は現役世代が老人に金を貸す国債と同じで、不公平のようにみえるが、相続を考えるとそうでもない。

いま親と子の2世代を考え、親が国債を買って子に相続し、政府がそれを年金の財源にすると想定しよう。国債は資金を親から政府に移すだけなので、利用可能な資源の量は変わらない。国債を償還するときは逆に政府から子に資金が移転され、それを税で償還しても利用可能な資源の量は変わらないので、国債は将来世代の負担にはならないというのがラーナーの機能的財政論である。

世代会計でみると、今の60歳以上は生涯で4000万円の受益超過で、20代は1200万円の負担超過だが、ここで60代の親が死んで遺産4000万円を20代の子に残すと、子は2800万円の受益超過になる。

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したがって遺産が100%相続される場合には、年金給付や国債発行で「将来世代へのツケ回し」は発生しない。世代間でみると、年金も国債も遺産として子が相続するからだ。賦課方式の社会保障は、世代間格差ではなく、遺産を相続できる個人とできない個人の資産格差を拡大するのだ。続きを読む

「大学無償化」はFラン大学を延命する社会的浪費

政府は3人以上の子どもがいる世帯について、2025年度から大学の学費などを無償化する方針だ。年内に閣議決定する「こども未来戦略」に盛り込み、所得制限は設けない。少子化対策の予算3.5兆円は、医療保険からの「支援金」でまかなう予定だ。

このため後期高齢者の窓口負担を2割にするなど1.1兆円の医療費削減をはかるというが、残る2.4兆円は社会保険料の増税になる。



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MMTの「無税国家」は社会保障を救うか

このごろ社会保障の話にMMTがわいてくる。たとえばこんな感じだ。

彼らの論理は単純である。現役世代の負担を減らすには、老人の負担を増やす必要はない。社会保障給付134兆円を借金すればいいのだ。MMTの論理では国債も必要なく、通貨を発行すればいい。たとえば財務省が「134兆円紙幣」を発行し、日銀がそれを買って日銀券を発行すれば、政府がそれを年金や医療給付に使える。

統合政府で考えると通貨は政府債務としては国債と同じだが、無利子で返済不要である。コアのMMTでは国債=通貨で金利はつねにゼロなので、歳出をすべて通貨でまかなう無税国家が可能なのだ。これによってインフレが起こるが、増税や価格統制でコントロールすればいい、とケルトンは言っている。

インフレで政府の実質債務が減るだけでなく、年金債務などの隠れ借金も減らせる。社会保障特別会計は大幅な赤字なので、今年度は一般会計から36兆円借りている。そのうち消費税が23兆円なので、残り13兆円が特別会計の一般会計に対する借金(国債)だ。これは今後ますます大きくなり、年金債務だけでも累計1100兆円以上と推定されている。

増税で一般会計の赤字は減らせるが、この隠れ借金は減らせない。それを減らす唯一の方法が、インフレ税なのだ。たとえば3%のインフレが10年続けば、一般会計の債務も年金債務も30%減る。名目ベースで決まっている医療費なども、実質給付額が30%減る。老人医療の3割負担などの「苦い薬」なしでも、みんなの負担を減らすことができる…だろうか?

続きは12月11日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

大英帝国は空洞化を金融資本主義で乗り超えた

円安を「国力の低下」と考える人が多いが、それは結果である。日本の製造業の国際競争力が低下したことは事実だが、円高にしたら国際競争力が高まるわけではない。円安で輸出品の価格競争力は高まり、貿易収支の赤字は減った。問題は、これほど円安になっても、製造業が国内に帰ってこないことだ。

黒田日銀の初期には、1ドル=80円台から120円台に下がれば輸出が増え、海外拠点が日本に帰ってくると黒田総裁は思っていたが、どっちも起こらなかった。むしろ円安で海外法人の外貨建て利益が増え、海外に再投資して連結経常利益が上がり、空洞化は加速している。

これはグローバル資本主義の原則から考えると当然だ。資本に国籍はないので、コスト最小の国に最適投資する。そういう現象が起こったのがイギリスである。ポンド/円の為替レートは、固定為替相場の時代には1ポンド=900円近かったが、最近では180円と1/5に下がった。

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しかし対外資産(GDP比)は世界一で、日本の4倍以上だ。負債も多いので純資産はマイナスだが、これはポンド安で対内直接投資が増えたためだ。純資産は日本が世界一だが、それを十分活用していない。問題はバランスシートの帳尻ではなく、利用できる資産の規模である。4倍借金して4倍投資するイギリスのほうが豊かなのだ。

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