経済

厚生年金の適用拡大は中小企業の大増税と15%の賃下げになる

10月から厚生年金の適用範囲が拡大された。労働者の適用要件は年収130万円から106万円に下がり、企業規模は「101人以上」から「51人以上」に拡大した。厚労省は企業規模の要件を来年度から撤廃し、すべての企業に厚生年金への加入を義務づける方針だ。自民党もこれを公約に明記した。
結構な話のようにみえるが、ここには落とし穴がある。「基礎年金の受給額底上げ」という奇妙な言葉が使われているが、基礎年金という年金をもらっている人はいない。これは国民年金と厚生年金・共済年金の1階部分を一つの年金勘定にプールした仮想的な年金なのだ。

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最低賃金1500円の「清算主義」は韓国に学べ

石破首相は所信表明演説で2020年代に最低賃金1500円という公約を打ち出した。これは岸田前首相が「2030年代なかばまでに」と言っていたのを前倒ししたものだ。今度の総選挙では、最低賃金に関しては与野党の公約が一致したが、それは実現できるのだろうか。

2024年度の最低賃金の全国平均は1055円。これをあと5年で1500円にするには年率7.3%、合計445円の賃上げが必要で、過去5年の150円をはるかに上回る。


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インフレ目標は廃止して金融調節は「中立金利」で

立憲民主党の政権政策の中で、多くの人を驚かせたのが、物価目標0%超である。これは本文の中に小さな字でこう書かれている。
日銀の物価安定目標を「2%」から「0%超」に変更するとともに、政府・日銀の共同目標として、「実質賃金の上昇」を掲げます。
それほど大事な話だとは思わなかったのだろうが、これはアベノミクスの憲法ともいうべき2%のインフレ目標を改正する大きな変化である。もし石破政権が過半数を割ると、これが政策協議の対象になるかもしれない。だがその説明は支離滅裂である。

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もし「高市首相」がリズ・トラスのような財政バラマキをやったら

自民党総裁選はきょう15:30に結果が判明するが、日経平均は「高市首相」を織り込んで上がっているという。為替も1ドル145円台と円安になったが、高市首相で実際に何が起こるかを考えてみるのもおもしろい。



誰もが連想するのは、2022年のトラス・ショックである。イギリスのリズ・トラス政権は9月に、エネルギー危機対策として価格統制を行うと同時に「過去50年で最大の減税」を発表した。

450億ポンドの減税でミニバジェット(小さな予算)を実現し、財政赤字はすべて国債でまかなう。大減税によって「中期的に成長で財源をまかなう」という。財政支出は5年間で1610億ポンド(約25.5兆円)にのぼるが、財源はすべて国債で調達する。

この発表直後、財政悪化を警戒して長期金利が5%に上がり、株価が下がり、ポンドは対ドル最安値を更新して「トリプル安」に陥った。



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医師免許の独占をやめて「医師資格認定」を

この投稿が80万インプレッションを超えて変なリプライがたくさん来たので、まとめて答えておく。


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法人税率を上げると税収は減り、その損失は労働者が負担する

自民党総裁選の討論会で、石破茂氏が「法人税を上げる余地がある」と発言したことが話題になっている。


何を根拠に「上げる余地がある」といっているのかわからないが、日本の法人税の実効税率はアジアでは最高である。



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政策金利は名目中立金利より低い(テクニカル)

日銀の金融政策決定会合は予想どおり現状維持だったが、植田総裁の記者会見には、黒田総裁が決して口にしなかった言葉が出てきた。中立金利である。これは経済に中立な実質金利で、経済学では自然利子率と同義だ。

しかし最近は自然利子率+予想インフレ率の意味で使う人もいる。田村審議委員は中立金利が「1~2.5%」だというが、これは明らかに自然利子率ではない。自然利子率(均衡実質金利)r*は推計によって幅があるが、日銀の推計によればマイナス1%~0.3%である。

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予想インフレ率はブレークイーブンインフレ率(BEI)で近似するので、名目中立金利はr*+BEIだが、BEIは直近では1.3%なので、名目中立金利は0.3%~1.6%になる。現在の0.25%という政策金利は、この最小値より低い。植田総裁は記者会見で「中立金利の水準は?」という質問に、次のように答えた。

中立金利の推計はかなり幅がある。様々な分析を引き続き積み重ねる。今年は2回利上げをしているので、経済への影響をみつつ今後徐々に中立金利に関する考え方を深めていく。

これは日銀の推計と比べても、今の政策金利が低いことを暗に認めたのだろう。中川審議委員は「少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げていく」とのべたが、さすがに総裁がそこまでいうと、またパニックをまねきかねないので自重したのだと思う。

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解雇の「金銭解決ルール」を立法化するとき

自民党総裁選が告示され、9人の候補が届け出た。その中でも最有力とされる小泉進次郎氏には、他の候補から意地悪な質問が集中した。

高市氏のいう「日本の解雇規制は弱い」というのは、改革したくない政治家がいつもいう話だが、これは今月の記事でも書いたように間違いである。



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老人医療無料化を終わらせた「健保連の乱」(アーカイブ記事)

少子化対策の「支援金」に批判が集まっているが、こういう拠出金は1983年に老人保健法でできた老健拠出金から始まった。これは老人医療の無料化による国民健康保険の赤字を健保組合からの拠出金で埋めるものだが、これに対して健保組合の不払い運動が起こった。

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厚労省の資料

反乱はサンリオから始まった。1999年5月、サンリオ健保組合は老健拠出金の納付を拒否した。拠出金が前年度から4割も増え、組合財政の赤字転落が確実になったからだ。同健保組合は「拠出金は行政の無能を組合に転嫁し、財産権を侵害するものだ」として厚生省に不服審査請求を提出し、拠出金の半額を支払わなかった。

この審査請求は却下されたが、サンリオに呼応して全国1800の健保組合の加入する健康保険組合連合会(健保連)が、7月分の老健拠出金の支払いの一時凍結を決めた。この健保連の乱は政府に大きな衝撃を与え、滞っていた老健制度の改革が一挙に進んだ。続きを読む

社会保険料と所得税を一体化して「社会保障税」に

河野太郎氏が社会保険料の引き下げを提案して、大反響を呼んでいる。このポイントは現役世代の健康保険組合などから老人医療に仕送りされている「支援金」などの不透明な拠出金を廃止することだが、問題はその財源である。

図でもわかるように、健保組合や協会けんぽから国保に3.6兆円の前期調整額、後期高齢者に6.3兆円の後期支援金の合計9.9兆円が支出されている。サラリーマンの健康保険料のほぼ半分が、自分の親でもない高齢者の医療費に使われているのだ。


医療費の窓口負担を一律3割にし、高額療養費などを圧縮すれば3兆円ぐらい老人医療費が削減できるが、それでも支援金をなくすには7兆円の財源が必要になる。これを消費税でまかなうと3%の増税になるが、所得税を増税する手もある。

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