経済

日本が学ぶべき「衰退国の先輩」イギリス

8月の貿易赤字が過去最大の2.8兆円になったことが話題になっている。この最大の原因はウクライナ戦争による資源価格の上昇だが、輸出がほとんど伸びなかったことも響いた。所得収支はまだ黒字だが、両方を合計した経常収支は今後マイナスになるだろう。

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これは一時的な現象ではなく、これから日本は経常収支が赤字の国になるだろう。キンドルバーガーの国際収支発展段階説によれば、次のような段階を追って経済は成長して成熟し、衰退する。
  1. 途上国:貿易収支は赤字で、金融収支は黒字(借り入れ)
  2. 成長国:貿易収支は黒字になるが、所得収支は赤字なので経常収支は赤字
  3. 輸出国:経常収支が黒字になり、金融収支は赤字(貸し出し)
  4. 債権国:貿易収支と所得収支が黒字になリ、経常収支は大幅な黒字
  5. 成熟国:貿易収支は赤字になるが所得収支は黒字で、経常収支の黒字が縮小
  6. 衰退国:経常収支が赤字になって金融収支が黒字になる(対外資産を取り崩す)
日本でいうと、戦前は1の段階だったが、1960年代までは2で、1970年代以降は3から4になった。2010年代以降は5になり、これから6になるだろう。これは大英帝国がこの200年にたどった変化を、駆け足で追いかけている。

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イギリスの経常収支(イングランド銀行)

イギリスは20世紀にはずっと貿易赤字だったが、これを植民地からの搾取(所得収支)で補い、経常収支は大幅な黒字だった。第2次大戦で植民地を失って大幅な赤字になったが、ポンドを切り下げて黒字にした。この過程で資本が海外に流出し、イギリスは今も世界最大の債権国である。

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1ドル=150円で日本経済はよみがえるか

私がブログで「1ドル=150円で日本経済はよみがえる?」と書いたのは、ちょうど2年前だが、きょうは1ドル=144円。私の予想は半分当たったが、よみがえるかどうかはこれからだ。

円安の短期的な原因は金利差だが、それだけでは為替レートは動かない。最終的にどの程度が「均衡水準」かを市場関係者も意識している。当局は「オーバーシュートだ」というが、マーケットはそうみていない。

最大の構造的な原因は、2年前の記事でも書いたように、日本経済が大幅な国内の需要不足を抱えていることだ。きょう発表された国際収支統計をみても、経常収支は黒字である。貿易収支は資源価格の上昇で大幅な赤字になったが、所得収支(海外投資収益)の黒字がそれより大きいので、経常収支は黒字なのだ。



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「防衛国債」は戦後レジームか

来年度予算の編成をめぐって防衛国債が焦点になってきた。これは安倍元首相の悲願だったが、岸田改造内閣では財務省寄りの浜田靖一氏が防衛相になってむずかしくなったと解説されている。問題になっているのは、財政法4条の次の規定である。
国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。

第1項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。
この「公共事業費」に該当するのが建設国債とされているが、その範囲は財務省が法律で決める。たとえば海上保安部の巡視船は建設国債で調達できるが、海上自衛隊の護衛艦はその対象になっていない。

これは1947年に大蔵省の主計局長が「財政によって憲法の戦争放棄の規定を裏書保証せんとするもの」だという逐条解説をし、これを安倍氏が「財政の戦後レジームだ」と批判し、防衛費も建設国債で例外扱いする「防衛国債」とすべきだ、と主張したものだ.

結論からいうと、この議論は無意味である。国債にこんな区別を設けている国はない。借金に色はついていないので、建設国債にしたら金利が安くなるわけではないからだ。しかし将来世代の負担という観点から考えると、防衛費を国債で調達するか税で調達するかという問題には意味がある。

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日本の原子力産業は「余命10年」



きのうのシンポジウムでは、ホリエモンの原子力についての話が印象的だった。3・11から11年たち、全国の原発には動いていた時期を知らない人も多い。もっと深刻なのは、原子力開発を志す若者がいなくなったことだ。その教訓を航空機産業に学ぶことができる。

三菱重工が国産ジェット機(MRJ)の開発を開始したのは、2008年だった。これは座席100席程度で地方路線を飛ぶ「リージョナル・ジェット」で、YS-11で成功した航空機技術を生かし、日本がジェット機に進出しようというものだった。

日本の航空機は、かつてはゼロ戦のように高い技術をもっていたが、敗戦で航空機メーカーが解体された。1950年代に開発が許可され、1965年には戦後初の国産航空機、YS-11が就航した。日本の製造業は自動車のように部品が3万点以上だと優位性を発揮するが、航空機の部品は100万点以上で、日本の得意分野だった。

YS-11は部品の50%以上を分担する三菱など7社が各部品を分担して開発したが、商業的には成功しなかった。1980年代以降の航空自由化の中で価格競争が激化して海外では赤字受注になり、市場が国内に限られたからだ。

それから40年をへて、国交省が支援して三菱が開発したのがMRJだが、開発は難航し、2020年に事業が凍結された。その原因は複雑だが、ホリエモンが指摘したのは、YS以来40年の技術の空白だった。航空機のように複雑な製品になると、要素技術だけでなく、それを組み合わせる総合調整力が必要になる。それが途切れてしまったのだ。

原子力技術は今のところまだ日本が世界のトップだが、今のままでは航空機と同じ運命をたどるおそれが強い。原発は部品1000万点に及ぶ巨大プロジェクトであり、しかも日本はそのほとんどを国内で調達している。このサプライチェーンがいったん失われると、再構築はむずかしい。ホリエモンの見立てでは「原子力産業の余命はあと10年」だという。続きを読む

EVは内燃機関を駆逐するか

ガソリンエンジンが電気自動車(EV)に置き換わるかどうかは、日本の産業の今後を左右する重要な問題である。日本電産の永守会長の発言が、大きな反響を呼んでいる。


これは技術的には正しい。ドライバーの9割は航続距離30km未満なので、1000kmも走る車のマーケットは小さい。そういう特殊な車を除外すれば、今ある技術で十分で、大量生産すればコストは下がる。これは日本電産のようなモーターの市場では明らかだ。

これに対して賛否両論が湧き上がった。今のEVは、内燃機関にはるかに劣る。燃費だけ考えても、10万km走行まではハイブリッド(HV)のほうが効率的だ。次世代の主流がHVになることはすべてのメーカーのコンセンサスだと思うが、そこから先は意見がわかれる。

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消費税の増税は法人税減税のためではない

NHKの日曜討論で、高市政調会長が切れた。


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1ドル=150円で「人と資本のインバウンド」を

ゆうべはスイス中銀の利上げで一時的に円高になったが、きょうの金融政策決定会合で日銀は、0.25%のYCC(イールドカーブ・コントロール)の維持を決め、1ドル=134円台に戻した。これは金融政策としては異常だが、長期的には1ドル=150円ぐらいになると、ISバランスは均衡するかもしれない。



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日銀はいつまでYCCを維持できるのか

日銀は7年物から10年物まですべての国債を毎日3兆円を超える規模で買っているが、長期金利は0.25%を少し上回る水準で推移している。

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10年物国債の金利(Trading Economics)

常識的には、ソロスがイングランド銀行を売り崩した外為市場とは違い、日銀は円建ての国債を買う資金を無限にもっているので、ヘッジファンドが勝てるはずはないが、空売りをかけたブルーベイは勝てると考えている。日経のインタビューによると

米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めに積極的なタカ派的な姿勢を強めており、世界の金利には上昇圧力がかかっている。その中で日銀だけが長期金利の上限を0.25%にとどめようとしているが、このような環境下ではそれは難しい。7~9月のどこかで、長短金利操作(YCC)政策を修正するのではないか。

我々が日本国債を売り始めたのは、1ドル=130円を超えて円安が進み出したときだ。円安が進むと日本の物価は上昇し、政治的な問題になるはずだ

日銀の国債買い支えは、理論的には限界がないが、政治的には限界がある。日銀が国債を無限に買い支えると、日米の金利差が拡大して円安が加速するので、指し値オペは円売り介入と同じ円安誘導なのだ。政権が「岸田インフレ」を恐れているとき、日銀が輸入インフレの原因になる円安誘導を無限に続けることはできない。


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黒田総裁の最後のギャンブル

1ドルが一時135円19銭と、24年ぶりの安値を更新した。きのう自民党の高市政調会長が、政府の為替介入について「今やるべきタイミングではない」と語ったことがきっかけだろう。



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It’s Baaack! マンデル=フレミング・モデルが戻ってきた!

1ドル=132円を超え、円安が爆走中だ。これは黒田総裁の「家計の値上げ許容度も高まってきている」という発言の影響と思われる。黒田総裁の講演は「もっと円安になるべきだ」というトーンで、これにマーケットが反応したのだろう。

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