法/政治

安倍晋三氏と統一教会の関係についての誤解

安倍晋三氏の射殺事件は、いろいろな憶測を呼んでいる。第一報を聞いて私も次のような動画を収録したが、このときは未確認だった事実が明らかになってきた。



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命より大事なものがある


「命より大事なものはない」というのは橋下徹氏の信念らしく、何度もツイートしている。誰でも死ぬのはいやだから、逃げるのは個人としては合理的な行動だが、集団としてはそうではない。

もし橋下氏が首相になったら、戦争のときはまず国民に「逃げろ」と指示し、自衛隊にはただちに投降を命じるだろう。それによって犠牲は最小化されるようにみえるが、日本が降伏するとわかっていたら、中国は戦争を仕掛けてくるだろう。

集団の中では利己的に行動することが合理的だが、そういう利己的な個体ばかりの集団は生存競争に勝てないというパラドックスは、社会生物学で集団淘汰の法則として知られている。

利己的な個体は利他的な個体に勝つが、利他的な集団は利己的な集団に勝つ。

この法則はすべての生物に当てはまるが、人類にとっては特に重要である。人間は集団の中でしか生存できないので、戦争で命を賭けて集団を守ることは個人にとっては合理的ではないが、集団にとっては合理的なのだ。このパラドックスを解決するためにできた制度が国家である。

続きは7月11日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

泊原発の判決に欠けている「根拠法」

北海道電力の泊原発の運転差し止めを求める判決の判決要旨を読んでみた。まず奇妙なのは「被告は原子炉1号機ないし3号機を運転してはならない」という主文である。これはどんな法律を根拠とし、誰が北電の原子炉運転を止めるのだろうか。

原子炉等規制法で原発の運転停止を命令できるのは原子力規制委員会だけだが、この訴訟には規制委員会が当事者として登場しない。泊原発が規制基準を満たすかどうかを判断するのも規制委員会だけだが、この判決の根拠は憲法13条の「人格権」だけで、運転を止める根拠法が書いてない。

判決本文も異常である。北電の態度が悪かったことへの不満を延々と書き、差し止めの理由は「防潮堤の高さが16.5メートルでは足りない」ということだけだ。

これも規制委員会が規制基準に従って判断することだが、裁判所が勝手に決め、それ以外の論点は無視している。10年かかった割には、ずいぶん荒っぽい判決である。裁判官の苛立ちはわかるが、これでは控訴審でくつがえされるだろう。

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赤字国債の禁止は「戦後レジーム」か

ウクライナ問題を受けて、来年度予算の防衛費増額が焦点になっているが、WiLL6月号の安倍元首相と北村滋氏(前国家安全保障局長)の対談の中に、ちょっとおもしろい話がある。安倍氏は「赤字国債の発行を禁じる財政法4条は戦後レジームそのものだ」というのだ。財務省の逐条解釈にはこう書かれている。

第四条は、健全財政を堅持していくと同時に、財政を通じて戦争危険の防止を狙いとしている規定である。

戦争と公債がいかに密接不離の関係にあるかは、各国の歴史をひもとくまでもなく、我が国の歴史を見ても、公債なくして戦争の計画遂行の不可能であったことを考察すれば明らかである。公債のないところに戦争はないと断言し得るのである。したがって、本条はまた憲法の戦争放棄の規定を裏書保証せんとするものであるとも言い得る。

安倍氏はこれについて2016年の衆議院本会議で、共産党の質問に対して「これは財政の健全性の規定であり、戦争の防止は立法趣旨ではない」と否定した。逐条解釈は役所の法令解釈だから、それを首相が否定するのは異例だが、この解釈は誤りである。

財政法4条で定めているのは、公共事業に使う建設国債(特例公債)である。それ以外の経費については、毎年国会で特別法を立法して国債を発行する。これが赤字国債であり、予算案とは別に議決が必要だ(財務省の解説)。

これも儀礼化した手続きなので、実務的には建設国債と赤字国債の区別は無意味だが、来年度予算では重要になる。防衛費は将来世代の資産になるので、社会保障のように今の老人が食いつぶす消費支出とは違い、公共事業に近いのだ。

続きは5月9日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

戦争を反省しすぎた日本とドイツ



川口マーン恵美さんにドイツの事情を聞いて感じたのは、日本とドイツの戦後はまったく違うようで、実は似ているということだった。よく「ドイツは戦争犯罪を反省しているが、日本は…」といわれるが、ドイツも日本も戦争を反省しすぎて、いつまでもそのトラウマから脱却できない。

ドイツは敗戦で国家が消滅し、東西に分割されて4ヶ国が管理したが、日本は沖縄以外は丸ごと残った。これは幸運で、日本の降伏があと半年遅れたら、分割された可能性が高い。日本を4分割する案が、連合国では検討されていた。

日本国憲法は日本政府の提案した明治憲法の改正案をマッカーサーが一蹴し、わずか1週間でまったく違う憲法を起草したが、ドイツは東西対立の中で憲法が制定できず、西ドイツはようやく1949年に「基本法」を制定したが、再軍備はできなかった。

基本法は統一されるまでの暫定的な法律という位置づけだったので、その後60回も改正された。これはゼロからつくったので、ドイツ人が自分でつくったという意識があったが、日本は自分で憲法を制定できず、いつまでも「押しつけ憲法」だというルサンチマンが残った。

続きは4月25日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

なぜ侵略は「悪」なのか

東大入学式の河瀬直美氏の祝辞が問題になっている。この祝辞は全文を読んでも、悪文で論旨が不明だが、問題になったのは次の部分である。

例えば「ロシア」という国を悪者にすることは簡単である。けれどもその国の正義がウクライナの正義とぶつかり合っているのだとしたら、それを止めるにはどうすればいいのか。

なぜこのようなことが起こってしまっているのか。一方的な側からの意見に左右されてものの本質を見誤ってはいないだろうか?誤解を恐れずに言うと「悪」を存在させることで、私は安心していないだろうか?

自分たちの国がどこかの国を侵攻する可能性があるということを自覚しておく必要があるのです。そうすることで、自らの中に自制心を持って、それを拒否することを選択したいと想います。

これは「節分には「福はウチ、鬼もウチ」という掛け声で、鬼を外へ追いやらない」という寺の話を受けているので、一般論として寛容や価値相対主義を述べているだけとも解釈できるが、「自分たちの国がどこかの国を侵攻する可能性がある」という言葉には政治的意図がある。

論理的には「ロシアにもウクライナにもそれぞれの正義がある」という命題は正しい。それは「強盗にも被害者にもそれぞれの正義がある」という命題が正しいのと同じである。それではなぜロシアの行動は「悪」なのか? それは河瀬氏の考えているほど簡単なことではない。

続きは4月18日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

防衛力強化は財源論と切り離せ

アゴラは「自由な議論の広場」ですが、長くてむずかしいと敬遠する人が多いので、コメントや短文も載せることにしました。みなさんからも投稿してください。その素材として、けさの長島昭久さんの記事を取り上げます。

続きはアゴラ

ウクライナ戦争はジェノサイドである

ウクライナ侵略について、米バイデン大統領は「戦争犯罪」と断定し、岸田首相は「国際法違反だ」と言ったが、その目的はいまだにはっきりしない。特定の民族を絶滅させるジェノサイド(民族浄化)は国際法違反だが、プーチン大統領はそういう目的を表明していない。

しかしロシア国営のRIAノーボスチ通信は、署名記事の形で「ロシアはウクライナで何をすべきか」というロシア軍の方針を発表した。これはロシア軍がウクライナの非ナチ化(de-nazification)が目的だと書いている。自動翻訳で引用しよう。

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非ナチ化は、人々のかなりの部分(おそらく大多数)が習得され、その政治においてナチス政権に引き込まれたときに必要です。つまり、「国民は良い・政府は悪い」という区別が機能しないのです。非ナチ化は、戦争犯罪者として技術的に直接の罰を受けることができない、人口の非ナチ化された集団に関連する一連の措置です。

武器を取ったナチスは戦場で最大限に破壊されるべきです。民兵を区別する必要はありません。これらの2つのタイプの軍隊に加わった領土防衛。それらのすべては、民間人に対する極度の残虐行為に等しく関与しており、ロシア人の大量虐殺についても同様に有罪であり、戦争の法律や慣習を遵守していません。

ナチズムの実践に関与している組織はすべて清算され、禁止されています。しかし、トップに加えて、ナチズムの共犯者である受動的なナチスである大衆のかなりの部分も有罪です。彼らはナチスの力を支持し、甘やかしました。人口のこの大衆のさらなる非ナチ化は、ナチスの態度のイデオロギー的抑圧(抑圧)と厳格な検閲によって達成される再教育にあります。
この文書のいう「ナチス」は「受動的な大衆」を含むウクライナ人をさすので、非ナチ化とは(軍民を問わず)彼らがナチスとみなしたウクライナ人を最大限殺すという意味である。

ここではロシア軍の目的は特定の地域を領有することではなく、ウクライナ人の絶滅である。プーチンにとってはウクライナ人は同じ民族なので「民族浄化」ではないが、「集団殺害」という意味ではジェノサイドといえよう。ウクライナのゼレンスキー大統領は「このRIAの文書は戦争裁判で証拠として採用されるだろう」と述べた。続きを読む

ウクライナ人の後ろから弾を撃つのはやめよう

八幡さんの記事には問題がある。アゴラは自由な討論の広場なので、編集部の見解と異なる意見も歓迎するが、「英米が戦争を終わらせたくない」というのは事実に反する。

八幡さんの持論は「ウクライナ人はロシア人と同じ民族だから、プーチンが併合するのは当たり前だ」ということらしいが、主権国家の帰属はその国民が決めるというのが国際法の原則である。それはロシア人とウクライナ人の歴史的関係とは関係なく、2度の世界大戦を通じて人類が築いてきた最小限のルールである。

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ロシア軍はなぜキエフで敗北したのか

2月24日に戦争が始まったとき、ほとんどの人が(私を含めて)ロシアが圧勝して傀儡政権を樹立するだろうと予想した。しかしその4日後に「なぜロシアは敗北するか」というツイートを出した軍事アナリストがいた。80もある連続ツイートを、かいつまんで紹介しよう。


今回の首謀者ショイグ国防相は、プーチンに迎合する「宮廷政治」の達人で、合理的に戦争を行う能力がなかった。彼は軍需産業に迎合して、陸軍と海軍の両方の軍備を増強した。


このためロシアの陸軍は弱体で、ロシアは初期の「電撃戦」で勝利できなかった。プーチンがウクライナ侵略を「特殊な軍事作戦」と呼んだことには重要な意味がある。それは古典的な意味での戦争ではないのだ。続きを読む



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