IT

もう「NTT問題」を卒業しよう

楽天の三木谷社長に、NTT広報が反撃して話題を呼んでいる。


これに対してソフトバンクやKDDIも応戦している。


事の発端は、昨年決まった防衛費の増額の財源として、政府が保有するNTT株の33.3%を売却して完全民営化する話が自民党で出てきたことだ。NTTの時価総額は、22日現在で15.7兆円。政府保有株の時価は5.2兆円である。これをすべて売却すれば、防衛予算の半年分ぐらいは出るが、恒久財源にはならない。

それより大事な問題は、完全民営化するとどんな「国民の利益」が損なわれるのかということだ。自民党内で反対が強いのは②のユニバーサルサービスからの撤退だが、今どき電話線を全国で維持する必要はない。③の安全保障については、そのための規制をすればよい。ソフトバンクのインフラは外資のボーダフォンが所有していたが、それ自体は問題ではない。

結局、①の「国費で作られた局舎・電柱・管路等を活用して構築された光ファイバー網」が独占されるというのが、ほぼ唯一の論点だと思うが、これも無線が主流になった現在では、ほとんど意味がない。それよりNTTが特殊会社として強く規制されていることが、日本の通信業界全体の地盤沈下をまねいている。

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半導体産業はなぜグローバル化できなかったのか

今度の補正予算では、経産省は半導体や生成AIの開発に2兆円を出資する予定だ。その中心は北海道につくるラピダスの試作ラインである。半導体はかつて日本の産業政策のサクセスストーリーだったが、90年代以降は失敗の連続だった。政府の補助金は「死の接吻」だというフリードマンの言葉を実証するように、国策プロジェクトはすべて失敗した。

かつて半導体は日本メーカーの得意分野で、1992年には世界の半導体売上高トップ10社のうち、6社が日本メーカーだった。それから30年。貿易統計で電気機器の輸入は輸出を上回り、今やテレビの90%は輸入品である。半導体のトップ10社に日本メーカーは1社もない。なぜこうなったのか。

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半導体の売上げ推移(湯之上隆氏)

この図も示すように、日本の半導体の盛衰は、ほぼDRAMの運命と軌を一にしている。1980年代に日本メーカーが世界を制覇したのもDRAMであり、日米半導体協定の対象もDRAMだった。これはCPUのようにインテルの著作権がなく、微細加工をきわめて品質管理で歩留まりを上げるという日本人の得意分野だった。

しかしこれはコモディタイズしやすいことを意味する。90年代に多くの電機メーカーが参入してDRAMの値崩れが始まったとき、日本メーカーは「レッドオーシャンになったDRAMの時代はもう終わった」というコンサルの話を真に受け、付加価値の高いSoC(システム半導体)や液晶に方針転換した。それが失敗だった。

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楽天が「一発逆転」するたった一つの方法



きのうはホリエモンや中田敦彦さんなどと一緒に、いま話題の楽天について話した。8月10日に発表された今年上半期の最終損益は1400億円の赤字だったが、その最大の原因は半期で1850億円にのぼる楽天モバイルの赤字である。

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マイナンバーカードに反対する人が恐れる本当の理由

マイナカードをめぐる騒ぎが続いている。確かに設計に問題があり、システムが複雑でわかりにくいが、この背景には国民総背番号をきらう人々の反発を恐れていろんな役所がばらばらに制度をつくり、挫折した長い歴史がある。



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マイナンバーカードを廃止すれば同性婚の問題も解決する

マイナンバーカードが大混乱である。 別人にカードを交付したり、他人の個人情報を紐づけたり、コンビニで他人に交付したり、という人為的ミスや入力エラーは、全部で8400万枚も発行したのでしょうがない面もあるが。つくれないはずの家族名義の口座が13万件以上もできたのは、明らかに設計ミスである。



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マイナンバーカードにはなぜフリガナがないのか

マイナンバーカードのトラブルが大きな問題になっている。いろいろなトラブルが報告されているが、入力ミスは統計的に一定の比率で発生するもので、河野大臣が謝罪するような問題ではない。深刻なのは、公金受取口座を家族名義で登録したケースが(今日までにわかっただけで)13万件もあることだ。

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その原因は、図のようにマイナンバーの情報にフリガナがないためだ。たとえば池田信夫の子が池田太郎だとすると、マイナポータルで太郎が「イケダノブオ」というフリガナを入力すると、そのまま通ってしまう。ところが銀行の口座情報はカタカナなので、照合できないのだ。なんでこんな間抜けな設計になったのか。

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プラチナバンドで地上波テレビのイノベーションが起こる

ワールドカップの中継では、AbemaTVの同時接続が最大1500万人に達したという。これは視聴率でいうと15%で、フジテレビの34.6%の半分近い。放送権料は350億円と推定されるが、そのうち200億円をアベマが負担したらしい。もう地上波とネット放送の力関係が逆転したのだ。



これは先月ホリエモンと話した対談だが、私があいているプラチナバンド(470~710MHz)を携帯に割り当てる話をしたのに対して、ホリエモンは「テレビに割り当ててはどうか」という。これは電波業界の常識ではありえない。これから地上波テレビのネットワークを全国につくることは不可能で、放送なら衛星のほうがはるかに効率がいいからだ。

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総務省はなぜ電波オークションをいやがるのか

楽天の騒ぎでまた電波オークションが話題になっているが、不思議なのは総務省がオークションを拒否する姿勢である。オークションは日本以外のOECD諸国では導入されているが、総務省が最後までこれを拒否するのは、業者との密約があるからだ。これはNOTTVの例でみるとよくわかる。

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この問題は2007年に、2.5ギガヘルツ帯の比較審査が行なわれたときにさかのぼる。このとき4グループの中でドコモが落選し、ウィルコムが当選したが、経営が破綻してカーライル・グループに買収され、さらにソフトバンクが買収した。同社が経営の破綻したウィルコムを買収したのは、4G(第4世代)と呼ばれる900メガヘルツ帯の割り当てで総務省に貸しをつくる密約だった。

他方、総務省が2.5ギガ帯でドコモを落としたのは、2011年にアナログ放送をやめて空くVHF帯を与える取引だった。VHF帯には外資のクアルコムが参入しようとしており、これに対して民放連が既得権を守ろうとしていたので、通信業者の協力が必要だったのだ。

クアルコムは最後まで粘り、衆議院議員会館で公聴会が開かれた。民主党の議員が「オークションをやれ」と追及したが総務省は拒否し、電波監理審議会はわずか2時間の審議でドコモ=民放連グループのNOTTVに免許を与えた。それはわずか3年で破綻し、VHF帯はあいたままだ。

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なぜ通信自由化は成功し、電力自由化は失敗したのか

通信自由化は「新自由主義」の輝かしいサクセスストーリーである。1984年にAT&Tが分割されたのは司法省との訴訟の和解の結果で、成功すると予想した人は少なかった。規制から解放された長距離電話部門(AT&T)は、コンピュータを開発してIBMと並ぶ巨大企業になるが、各州内の電話網しかない地域電話会社(ベビーベル)は没落すると思われた

ところが現実は逆だった。長距離通信にはワールドコムなど多くの新しい通信業者が参入し、競争が激化してAT&Tは没落したが、ベビーベルは独占利潤を上げ、逆にAT&Tを合併した。特に1990年代にインターネットが発展したとき、新しい通信業者がたくさん出てきて、急速な技術革新が実現した。

多数のパケットを中央でコントロールするシステムはなく、いずれインターネットは渋滞して崩壊すると予言した専門家もいたが、そうならなかった。それは通信が回線交換からパケット交換(蓄積交換)に変わり、混雑してもパケットをルータに蓄積して送り直せる冗長性ができたからだ。

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日経XTECHより

それに対して電力自由化は、各国でも大停電が起こったりして成功とはいいがたい。特に日本では、2010年代に再エネFITと一緒にやったため、今の大混乱が起こっている。その違いは何だろうか。続きを読む

行政のデジタル化は電子投票から

先の総選挙で、立憲民主党と国民民主党がともに略称を「民主党」としたため、投票用紙に「民主党」と書いた400万票が迷子になった。これは両党の得票数に応じて比例配分されたが、400万票という誤差は共産党の得票に近い。

他方、島根1区では、立憲民主党の「亀井亜紀子」氏に対して無所属の「亀井彰子」氏が立候補し、混乱を起こした。これも「亀井あきこ」と書いた票は比例配分された。過去には同姓同名の候補者が立候補したこともある。

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