技術への問い(日経BPクラシックス) (日経BPクラシックス)
有機農業や農薬禁止を訴える参政党が人気を集めているが、こういう「自然に帰れ」という主張は反原発や「自然エネルギー」などと同じで、新しい話ではない。

本書に収録されている「技術への問い」はそういう主張の元祖として利用されてきたが、これは誤解である。ハイデガーはこう書く。
人間を取りまとめて集めることでおのずと<覆いを取り去る>ようにして現れるものを、<徴用されたもの>として徴用する働きをする挑発の呼びかけのことを、<挑発性>(ゲシュテル)と呼ぶことにしましょう。(p.45)
このGe-Stellがキーワードだが、ハイデガーの造語なので対応する日本語はない。これを従来の訳本では「総かり立て体制」などと訳し、あたかもハイデガーが技術を否定しているかのように解釈していたが、彼の意図はその逆である。

技術が科学的真理の応用であり、その使い方を誤ると害を及ぼすという通俗的なヒューマニズムをハイデガーは批判し、技術は自然の<覆いを取り去る>ことによって科学を生み出したのだという。

「自然エネルギー」なるものは存在しない。人類が生まれてから自然はつねに人工的であり、技術は両義的な存在だった。薪は今でも原子力よりはるかに危険なエネルギーである。それは毎年380万人を室内大気汚染で殺しているのだ。

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