長期金利の上昇が止まらなくなり、石破首相の「日本の財政はギリシャより悪い」を初め、いろいろな流言蜚語が飛び交っている。1990年代の経験からも、これがもっとも危険な金融危機の引き金である。その重要な例として、国会議員のツイートをあげておこう。


この「先日付けた近年の最高値」というのは「最安値」の誤りだが、それはともかく「日銀が内部留保を食い終わる」というのはデマである。直近のデータでは

 ・自己資本:約14兆円
 ・ETF評価益:約33兆円
 ・保有国債の評価損:約31兆円

なので、純資産は14+33-31=16兆円の資産超過である。日銀の資産評価は簿価(償却原価法)なので評価損は計上する必要がなく、「内部留保を食い終わる」ことはありえない。

日銀が債務超過になるのは、利払いが受け取り利息を上回る逆鞘になった場合だが、今のところ日銀当座預金の付利は0.5%、長期金利は10年物で1.5%なので金利収入がある。2023年度の経常利益は4.6兆円で、2024年9月期の経常利益は1.8兆円。債務超過になることは考えられない。

百歩ゆずって日銀が債務超過になったとしても、中央銀行には通貨発行益という特権があるので、破綻(資金ぐり倒産)することはありえない。現にFRB(米連邦準備制度理事会)は長短金利の逆転で事実上の債務超過に陥ったが、国庫納付金などをバッファにしたので、金融調節機能に支障はない。

図表(FRB、「債務超過」10兆円でもなぜ無風? 日銀への教訓)_DSXZQO4010015027102023000000

日銀は「政府の子会社」なので、その財務だけを取り上げて危機をあおるのは流言蜚語である。統合政府の支払い能力(solvency)が十分なら、政府が日銀を救済する手段はいくらでもあるのだ。問題は投資家が支払い能力に疑念を抱いて国債を大量に売り、それを日銀が買って通貨を大量に供給したときである。

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