江藤淳と加藤典洋 戦後史を歩きなおす
石破首相が「戦後80年談話」を出すつもりらしい。自民党内では反対が強いので「個人的なメッセージを出す」というが、首相が8月15日に出したら個人的なメッセージと思う人はいない。論理的にはいつまでも「戦後」だが、当事者でもない世代が戦争を反省する悪習は打ち止めにすべきだ。

江藤淳は60年安保のころは左翼だったが、アメリカに留学して押しつけ憲法に目ざめ、占領軍の言論統制を告発した。押しつけは事実だが、占領が終わって何十年たっても日本人が「WGIPに支配されている」というのは被害妄想である。

他方、加藤典洋は『敗戦後論』でこういう被害者意識を批判し、左翼が憲法を保守する一方、右翼がそれを革新しようとする「ねじれ」を指摘した。両者が共有していたのは日本が敗戦でアメリカの属国になったというトラウマだった。

左翼が陰謀史観をくり返す一方、右翼が男系天皇や夫婦別姓などの些細な問題にこだわるのも、こういう昭和老人のルサンチマンに迎合するつもりだろうが、今の若い世代には何のことかわからないだろう。

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