はじめての日本国債 (集英社新書)
橋下徹さんの「通貨発行益」をめぐる謎理論には批判が殺到しているが、これは日本の財政・金融を勉強するいい機会だ。本書は国債の入門書だが、日本の金融市場では国債のシェアが圧倒的に大きいので、金融システム入門でもある。

日銀当座預金は、一般人は使わないのでわかりにくい。まず引っかかるのは、当座預金になぜ金利がつくのかという疑問だ。これは準備預金であり、もともと金利はついていなかった。2008年にFRBがリーマン危機のあと大量に長期国債を買い、その資金が準備預金として戻ってきたので、法定準備率を超える超過準備に付利(IOER)をつけたのが始まりである。

かつて政策金利は短期国債の公開市場操作でコントロールしていたが、長期国債が500兆円にもなると短期国債では操作できない。そこで日銀も超過準備に金利をつけ、短期金利(無担保コール翌日物)の誘導目標としたのだ。付利を0.5%にすると短期金利との間に裁定が働き、0.5%に誘導できる。付利をゼロにしたら銀行が当座預金を引き出して短期市場に回し、資金市場は大混乱になる。

法定準備率以内の金利はゼロなので、日銀当座預金という名前はおかしくなかったが、超過準備に金利がつくようになっても名前を変えなかったので、リフレ派が「銀行へのお小遣いだ」などと難癖をつけ、橋下さんのような誤解も生まれる。当座預金という名前は変えたほうがいい。

法定準備率は日銀政策委員会が20%まで上げられるが、今は0.05~1.3%と非常に低い。海外の中央銀行では準備率の引き上げは普通だが、銀行の資金が日銀に固定されるので引き締め効果をもつ。このため引き上げには銀行業界が反対するが、日銀が1991年から上げていないのはよくない。

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