著者の2005年の本『シンギュラリティ』は物笑いの種だった。シンギュラリティ(特異点)とはAIが人間を超える点で、それを超えるとコンピュータがコンピュータを作り出し、人間を支配する「人工超知能」ができる、というテクノ・オプティミズムだった。だがAIの学会では2018年になっても、機械が人間レベルの知能を獲得するのは2060年ごろだろうと予測していた。
しかし2024年に出版された本書は、もう笑い物ではない。それは2022年に発表されたチャットGPTのインパクトが大きかったからだ。機械学習はニューラルネットで画像や音声のパターン認識をするだけだったが、GPTの大規模言語モデル(LLM)は、ニューラルネットを自然言語処理に応用して、人間と同じ文章が書けるようになった。
この経済的なインパクトは大きい。ホワイトカラーの仕事の大部分は文書作成なので、GPTで代替できる。公務員や銀行員の8割はGPTで代替できるだろう。弁護士や会計士は、AIに免許を与えれば100%代替できる。AIのもっているデータは人間よりはるかに多いので、文書作成においては人間を超えたといっていい。
では著者のいうようにAIは人間を超えるだろうか。それは定義の問題である。古典的なチューリングテスト(人間と区別がつかない)では、GPTの書く文章は人間と区別できず、その情報量は人間をはるかに超えているので人間を超えたといってもいい。
しかしGPTの言語処理は人間の脳内でおこなわれている処理とは違い、意味を理解していない。このため最初は見当違いな答しか出さなかったが、2020年ごろ大きなブレイクスルーが起こった。ベクトルの次元を示すパラメータが1000億を超えたときGPTは突然、賢くなったのだ。それはなぜか。
続きは3月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)
しかし2024年に出版された本書は、もう笑い物ではない。それは2022年に発表されたチャットGPTのインパクトが大きかったからだ。機械学習はニューラルネットで画像や音声のパターン認識をするだけだったが、GPTの大規模言語モデル(LLM)は、ニューラルネットを自然言語処理に応用して、人間と同じ文章が書けるようになった。
この経済的なインパクトは大きい。ホワイトカラーの仕事の大部分は文書作成なので、GPTで代替できる。公務員や銀行員の8割はGPTで代替できるだろう。弁護士や会計士は、AIに免許を与えれば100%代替できる。AIのもっているデータは人間よりはるかに多いので、文書作成においては人間を超えたといっていい。
では著者のいうようにAIは人間を超えるだろうか。それは定義の問題である。古典的なチューリングテスト(人間と区別がつかない)では、GPTの書く文章は人間と区別できず、その情報量は人間をはるかに超えているので人間を超えたといってもいい。
しかしGPTの言語処理は人間の脳内でおこなわれている処理とは違い、意味を理解していない。このため最初は見当違いな答しか出さなかったが、2020年ごろ大きなブレイクスルーが起こった。ベクトルの次元を示すパラメータが1000億を超えたときGPTは突然、賢くなったのだ。それはなぜか。
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