最近、ブランシャールの「日本はもっと財政出動すべきだ」という理論が、偏差値の高い政治家に人気だ。



IMF元理事で財政タカ派として知られたブランシャールが2019年のAEA会長講演で「ゼロ金利が続くなら財政出動が必要だ」という理論を打ち出したインパクトは大きかった。その後のコロナの大規模な財政出動も、彼の理論を裏づけるようにみえた。

ブランシャールは、先進国ではデフレとゼロ金利が今後50年続くというサマーズの理論にもとづいて「この需要不足は長期停滞による構造的なものだから金融政策は無効で財政政策が有効だ」と考えた。そのショーケースが日本だった。

しかし2023年に日本で『21世紀の財政政策』が出たころは、状況が大きく変わっていた。コロナ後も続けられたバイデン政権の「積極財政」で激しいインフレが起こり、ウクライナ戦争で世界的な資源インフレになった。日本でも2%を超えるインフレが3年近く続き、日銀は今週、政策金利を0.5%に上げる見通しだ。

政治家のみなさんは今ごろ周回遅れでブランシャールの訳本を読み、都合のいい部分をつまみ食いしているが、今ブランシャール自身はAEA講演の見解を修正している。少なくともアメリカのゼロ金利は構造的なものではなかった。日本もそうではないことがわかってきた。

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