「日本」とは何か 日本の歴史00 (講談社学術文庫 1900 日本の歴史 0)世界的に移民問題が政治的混乱の原因になっている。日本でも川口市のクルド人をめぐる紛争などで排外主義が強まっているが、そもそも日本人という単一民族があるのだろうか。

日本人が太古から変わらない単一民族でないことは、北方から来たアイヌや、朝鮮半島に起源があるといわれる天皇家や、明治以降の植民地支配の歴史をみても明らかだ。欧米人を個人主義的・好戦的な「狩猟民族」とし、日本人は稲作で暮らす「農耕民族」だから集団主義的で平和を好むというステレオタイプも、律令制以来の「農本主義」でつくられた神話である。

「日本」という国号や「天皇」という称号は7世紀に作られたものである。「日の本」というのが中国大陸から見た国名であることでもわかるように、日本は古来から中国大陸や朝鮮半島と強い依存関係にあり、むしろその混合物だといってもよい。日本列島は大陸から海で隔てられてきたわけでもない。古来、荷物の主な搬送路はむしろ海であり、「日本海」は大陸と日本を結ぶ回廊だった。

網野善彦が無縁の民と呼ぶ狩猟採集民は、農民より前から日本列島に暮らしていた。明治以降、「百姓」や「水呑」が蔑称とされて「農民」といい換えることが慣例になったため、近代以前の史料に出てくる「百姓」も農民と解釈されるようになったが、実際には百姓は文字どおり「いろいろな民衆」であり、農民だけではなかった。

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