海賊の世界史 - 古代ギリシアから大航海時代、現代ソマリアまで (中公新書 2442)
世界史上の大きな謎は、ヨーロッパの西端の小さな島国だったイギリスが、世界最大の帝国を築いたのはなぜかということだ。その一つの答は、彼らの先祖がバイキングだったことにある。

農民は一生、生まれた土地にしばられるが、海賊は遊牧民と同じように移動しながら獲物をさがす。それは現代では犯罪だが、歴史上の大部分ではそうではなかった。今でもイギリスや北欧には、海賊の伝統が生きている。

大航海時代に多くの国が遠洋航海で貿易をしたのに対して、後発の小国だったイギリスは海賊を国家が雇った。海賊フランシス・ドレークはエリザベス1世にその強盗の腕を見込まれて、王室海軍の副司令官になった。

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フランシス・ドレーク

彼らのねらいは新大陸やアジアから財宝を積んで帰ってくる商船だが、イギリスの海賊はスペインの無敵艦隊にはかなわないので、船に火を放って相手の艦隊に突っ込ませる「火船攻撃」で無敵艦隊を全滅させ、大西洋の制海権を握った。海賊は正式のイギリス艦隊に格上げされ、ドレークは爵位を与えられた。

彼らは新大陸で奴隷を使ってタバコや麻薬などのプランテーションをおこない、それをヨーロッパに売った利益で奴隷を買う「三角貿易」で巨額の利益を上げた。これが資本主義の始まりである。資本主義を生んだのはプロテスタンティズムではなく、世界を移動しながら獲物を奪う海賊のエートスだったのだ。

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