国民民主党の「103万円の壁」減税案は、全国知事会の反対で頓挫しそうだ。そこで今度は消費税の減税が出てきた。



これを批判すると山のように飛んでくるのが「減税で消費が増えて税収は上がる」という話だ。これは昔からある話で、レーガン大統領にアーサー・ラッファーという経済学者が紙ナプキンに描いて見せたのが、次のようなラッファーカーブである。

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横軸は所得税で、T*が税収を最大化する税率だとすると、今の税率がそれより高い場合は、税率が下がると税収は増える。レーガンは「私が初めて聞いた納得できる経済理論だ」とラッファーを絶賛し、この理論にもとづいて大幅な減税をおこなった。税収が増えるのを見込んで、大規模な軍拡をおこなった。

その結果、アメリカの財政赤字は激増し、高金利でドル高になり、貿易赤字が増えて「双子の赤字」になった。アメリカの中西部の製造業は没落し、失業した白人労働者の自殺率が上がった。これを日本の不公正貿易のせいだと考えたレーガン政権はジャパン・バッシングを始め、日米通商摩擦が激化した。

いま思えばその原因は単純だった。アメリカの所得税率は最適税率T*の左側にあったので、税率を下げたら税収は減ったのだ。これがいまだに減税派の理解していない事実だが、実は問題はそれほど単純ではない。

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