総選挙で大勝した立憲民主党の野田佳彦代表が、フジテレビのインタビューで「まず何を優先してやりたいか」という質問に「紙の保険証も使えるようにすること」と答えた。
政策が見えないという批判には「裏金問題で、公示の日から最後まで一点強行突破に徹したから、劇的な変化が生まれてきてると思います」と答えた。彼は選挙をよく知っている。かつて民主党政権で首相として辛酸をなめた経験が生きているのだろう。
古代アテネから18世紀まで、デモクラシーという言葉は衆愚政治という意味以外に使われたことがなかった。フランス革命もアメリカ独立革命も、デモクラシーによる革命ではなかった。
しかしルソーやジョン・ロックなどの啓蒙思想が普遍的な合理主義の概念を世界に広めたので、デモクラシーは科学的な合理主義だという誤解が生まれた。それに対して文化や宗教は各国に固有で普遍的な法則はないと考えられている。
最近の脳科学は、その逆であることを教えている。たとえば気候変動は客観的真理のようにみえるが、その評価は立場によってさまざまだ。IPCCは費用対効果を評価しないというスタンスを取っているが、これは温暖化対策のコストを無視する政治的イデオロギーである。
逆に文化や宗教にも普遍性がある。たとえば死体や排泄物のタブーは世界のすべての文化圏にみられ、「隣人を殺すな」というモラルも例外なく存在する。それはそういうモラルをもたない部族は絶滅してしまうからだ。キリスト教のような一神教こそ特殊なのだ。
選挙で役に立つのは、啓蒙的な合理主義ではない。たとえば野田氏が12年前に首相として提案した最低保障年金は合理的な改革だったが年金官僚につぶされ、誰もそれを知らない。
それに対して消費税の増税を延期する安倍首相の政策は歓迎された。これは目立つ消費税を増税しないでわかりにくい社会保険料を上げ、大衆のバイアスに迎合するナッジだった。これは立民党にもれいわ新選組にも共通した政治のテクニックである。
続きは11月4日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)
政策が見えないという批判には「裏金問題で、公示の日から最後まで一点強行突破に徹したから、劇的な変化が生まれてきてると思います」と答えた。彼は選挙をよく知っている。かつて民主党政権で首相として辛酸をなめた経験が生きているのだろう。
古代アテネから18世紀まで、デモクラシーという言葉は衆愚政治という意味以外に使われたことがなかった。フランス革命もアメリカ独立革命も、デモクラシーによる革命ではなかった。
しかしルソーやジョン・ロックなどの啓蒙思想が普遍的な合理主義の概念を世界に広めたので、デモクラシーは科学的な合理主義だという誤解が生まれた。それに対して文化や宗教は各国に固有で普遍的な法則はないと考えられている。
最近の脳科学は、その逆であることを教えている。たとえば気候変動は客観的真理のようにみえるが、その評価は立場によってさまざまだ。IPCCは費用対効果を評価しないというスタンスを取っているが、これは温暖化対策のコストを無視する政治的イデオロギーである。
逆に文化や宗教にも普遍性がある。たとえば死体や排泄物のタブーは世界のすべての文化圏にみられ、「隣人を殺すな」というモラルも例外なく存在する。それはそういうモラルをもたない部族は絶滅してしまうからだ。キリスト教のような一神教こそ特殊なのだ。
選挙で役に立つのは、啓蒙的な合理主義ではない。たとえば野田氏が12年前に首相として提案した最低保障年金は合理的な改革だったが年金官僚につぶされ、誰もそれを知らない。
それに対して消費税の増税を延期する安倍首相の政策は歓迎された。これは目立つ消費税を増税しないでわかりにくい社会保険料を上げ、大衆のバイアスに迎合するナッジだった。これは立民党にもれいわ新選組にも共通した政治のテクニックである。
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