反啓蒙思想 他二篇 (岩波文庫 青 684-2)
自民党総裁選で印象的だったのは、マージナルな極右とみられていた高市早苗候補が決選投票まで進んだことだ。その支持者が都市部で石破茂候補を上回ったのも特徴的だ。

石破氏が地方の高齢者という伝統的な自民党支持者を動員したのに対して、高市氏は「新しい右派」を発掘したようにみえる。彼女のイデオロギーは旧態依然たる皇国史観だが、それがいつまでも大衆を魅惑するのはなぜだろうか。

こういう啓蒙思想に反対するナショナリズムは、近代の初めからあった。バーリンがその元祖とするのは、イタリアのヴィーコである。彼はルソーの同時代人だったが、フランスの啓蒙思想を徹底的に批判した。デカルト以来の機械論は、世界を数学に帰着させる普遍主義だが、数学的に説明できるのは物理空間だけで、文化は各国ごとに違い、普遍的な法則はない。

これはヒュームやバークの懐疑主義と共通の思想だった。ヒュームはニュートン力学も疑い、その法則は心理的なものだとのべたが、その思想を継承したのがドイツの神学者ハーマンだった。科学は実用的な役には立つが、芸術を理解する役には立たない。ニュートン力学は、1篇の詩も生み出すことはできないのだ。

続きは10月14日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)