今回の自民党総裁選挙で慶賀すべき出来事は、高市早苗氏の敗北である。「一つの血統で126代も続いた皇室は日本にしかない宝物だ」という彼女の皇国史観は古来の伝統ではなく、明治時代に井上毅のでっち上げたプロパガンダである。
なぜ井上はそんな伝統を創作したのか。国民を戦争に動員するためだ。人は損得計算で死ぬことはできない。生命を失うことより大きな損はないのだから、死におもむくためには、個人の生命より重い超越的な価値を信じる必要がある。そこで井上が創作したのが天皇制という宗教だった。
井上は憲法で「万世一系の天皇」をでっち上げ、双系だった天皇家を「男系の皇統」にし、内閣や軍を統括する天皇親政の国制を決めた。国民を「天皇のために死ぬ」と教育するために教育勅語をつくり、兵士が天皇に命をささげるために軍人勅諭を書いた。これは江戸時代までのシンボリックな天皇とはまったく違う創作だったが、その効果はてきめんだった。
竹山道雄は1930年代のクーデタを現場で見た世代だが、普通の人は天皇を崇拝していたわけではなく、軍部はきらわれていたという。ところが青年将校は天皇機関説を排撃して「君側の奸」を殺し、天皇親政を実現しようとした。それは天皇こそ彼らが戦場で命を捨てる理由だったからだ。
続きは9月30日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)
なぜ井上はそんな伝統を創作したのか。国民を戦争に動員するためだ。人は損得計算で死ぬことはできない。生命を失うことより大きな損はないのだから、死におもむくためには、個人の生命より重い超越的な価値を信じる必要がある。そこで井上が創作したのが天皇制という宗教だった。
井上は憲法で「万世一系の天皇」をでっち上げ、双系だった天皇家を「男系の皇統」にし、内閣や軍を統括する天皇親政の国制を決めた。国民を「天皇のために死ぬ」と教育するために教育勅語をつくり、兵士が天皇に命をささげるために軍人勅諭を書いた。これは江戸時代までのシンボリックな天皇とはまったく違う創作だったが、その効果はてきめんだった。
竹山道雄は1930年代のクーデタを現場で見た世代だが、普通の人は天皇を崇拝していたわけではなく、軍部はきらわれていたという。ところが青年将校は天皇機関説を排撃して「君側の奸」を殺し、天皇親政を実現しようとした。それは天皇こそ彼らが戦場で命を捨てる理由だったからだ。
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