日銀の金融政策決定会合は予想どおり現状維持だったが、植田総裁の記者会見には、黒田総裁が決して口にしなかった言葉が出てきた。中立金利である。これは経済に中立な実質金利で、経済学では自然利子率と同義だ。

しかし最近は自然利子率+予想インフレ率の意味で使う人もいる。田村審議委員は中立金利が「1~2.5%」だというが、これは明らかに自然利子率ではない。自然利子率(均衡実質金利)r*は推計によって幅があるが、日銀の推計によればマイナス1%~0.3%である。

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予想インフレ率はブレークイーブンインフレ率(BEI)で近似するので、名目中立金利はr*+BEIだが、BEIは直近では1.3%なので、名目中立金利は0.3%~1.6%になる。現在の0.25%という政策金利は、この最小値より低い。植田総裁は記者会見で「中立金利の水準は?」という質問に、次のように答えた。

中立金利の推計はかなり幅がある。様々な分析を引き続き積み重ねる。今年は2回利上げをしているので、経済への影響をみつつ今後徐々に中立金利に関する考え方を深めていく。

これは日銀の推計と比べても、今の政策金利が低いことを暗に認めたのだろう。中川審議委員は「少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げていく」とのべたが、さすがに総裁がそこまでいうと、またパニックをまねきかねないので自重したのだと思う。

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