グリーン戦争―気候変動の国際政治 (中公新書)
地球温暖化は科学ではなく政治の問題である。これは私も『脱炭素化は地球を救うか』で書いたことだが、政治を分析する上では二つのアプローチがある。

一つは政策の観点から、それが国民に利益をもたらすのか、そしてどれぐらいコストがかかるのか、といった費用対効果を論じるものである。

もう一つは政局の観点から、誰が自民党総裁になるか、どの派閥が誰を応援しているか、といった人間関係や争いを追うものだ。

この分類でいうと、本書は「環境政局」の本である。それが悪いわけではない。だれが総裁に選ばれるかを予想することは、どういう政策が実行されるかを考える上では必要だが、本書には「環境政策」が何も書いてない。

トランプ大統領がパリ協定を脱退したところから始まり、それに対して1.5℃目標を実現しようとする欧州との「グリーン戦争」が描かれるが、これはいったい何のための戦争なのか。
  • 欧州が勝ったら1.5℃目標は実現できるのか?
  • それが実現したら人類は幸福になるのか?
  • 脱炭素化のメリットはそのコストより大きいのか?
残念ながら本書は、そういう問いには答えてくれない。気候変動や脱炭素化をめぐる欧州とアメリカとグローバルサウスの政局が微細に描かれるだけだ。

続きは8月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)