太陽の科学が予告する「2040年寒冷化」 脱炭素キャンペーンの根拠を問う
地球上のエネルギーはもとをたどれば100%太陽に由来するものだから、太陽を気候変動の原因と考えるのは自然だが、IPCCは太陽活動を一貫して無視してきた。その理由は、太陽活動に最近は大きな変化がないということだが、これは太陽活動を黒点などの熱流入に限定していた。

本書が注目するのは黒点ではなく、宇宙線である。太陽の磁場が弱まると地球に降り注ぐ宇宙線が増え、空気中のエアロゾルが水蒸気を吸着して低層雲をつくって太陽をさえぎる。このような「日傘効果」はスベンスマルク効果として知られ、IPCCも認めているが、第6次評価報告書では気温との相関が弱いとしてしりぞけた。

著者はこの点を最近の研究で補強し、宇宙線によって極渦(polar vortex)と呼ばれる現象が起こることを示す。これは図のように北極から寒気が南下する現象で、これが強まると地球は寒冷化する。

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本書のモデルでは、気候変動を
  • 温室効果:CO2などの効果で温暖化する
  • 日傘効果:宇宙線が強まると低層雲ができて寒冷化する
  • 極渦効果:宇宙線で北極から寒気がおりて寒冷化する
という3つの要因の合成と考える。太陽の磁場は1990年ごろから弱まり、2040年ごろ極小になると予想されているので、宇宙線が増えて2020年代後半から寒冷化し、2040年ごろ最低気温になるというのが本書の大胆な予言である。

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温室効果だけで気候変動は説明できない

これはよくある温暖化否定論ではなく、温室効果は認めた上で、それとは逆のエアロゾルによる寒冷化の効果を加えるものである。直感に反するのは、この50年間、単調に続いてきた地球温暖化が逆転するという予想だが、これには過去のデータの裏づけがある。

太陽活動には周期性があり、1990年以降の黒点数の変動は、211年前のダルトン期と呼ばれる時期の動きと非常によく似ている。今後もダルトン期と同じ周期がくり返されるとすれば、2040年ごろ最小になり、宇宙線の影響は最大になる。

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本書は人為的な気候変動として温室効果ガスしか考えていないが、最近の研究では大気汚染によるエアロゾルの減少が大きな効果をもつことが報告されている。これは日傘効果とは逆の影響をもつので、両方が相殺されると、結果的に温暖化は続くかもしれない。

いずれにせよ気候変動の要因としてCO2しか考えないIPCCのモデルは視野が狭く、次の図のように工業化以前の気温の変化をまったく説明できない。宇宙線と気温の相関はかなり高い。

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宇宙線の量(青)とアルプスの気温(赤)

気候変動はきわめて複雑な現象であり、まだまだわからない問題が多い。こんなあやふやな科学的根拠で、温暖化対策に何十兆円もコストをかけるのは無謀である。