増補 革命的な、あまりに革命的な (ちくま学芸文庫)
先日のNHKスペシャルは60年安保から連合赤軍までを「安保闘争」とくくり、あたかも一つの運動だったかのように描いていたが、これではあの時代はわからない。それを伝える本は意外に少ないが、本書はその気分をよく伝えている。

60年代後半の学生運動を「70年安保闘争」と呼ぶのは間違いで、最初はベトナム反戦運動だった。そのうち戦争の原因は資本主義だということになり、それを突き詰めると戦争をなくすために資本主義を打倒するという運動になった。打倒してどんな社会にするのかという目的はなく、暴れること自体が目的だった。

そのイデオロギーとして使われたのが、世界的にはフランクフルト学派の疎外論だった。資本主義が人間の本来あるべき姿をゆがめ、貧困や格差を生み出しているという理論は、大衆文化を批判する新左翼の理論的根拠になった。

日本の新左翼の教祖は吉本隆明だったが、思想的には無知蒙昧で影響を与えなかった。大きな思想的な影響を与えたのは廣松渉だった。これは奇妙なねじれで、廣松は疎外論を「人間中心主義」と批判して世に出た。これは当時ヨーロッパで流行していたレヴィ=ストロースやフーコーの構造主義と照応する知的ファッションだった。

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