西洋哲学史【新装合本】
廣松渉は近代哲学でもっとも重要な哲学者はヒュームだと言っていたが、ラッセルも本書で同じことを言っている。

ヒュームはロックとバークリーの経験論哲学を、その論理的帰結にまで発展させ、それを首尾一貫したものにすることによって信じがたいものとしたことから、哲学者の中でもっとも重要なひとの一人である。ある意味で彼は、一つの袋小路を代表している。彼のとった方向へは、もうそれ以上にゆくことは不可能なのである。(p.651)

ヒュームは25歳で『人間本性論』を書いたが、その過激な懐疑論は無神論だと疑われ、大学に職を得られなかった。彼はそれを否定しようとしたが、死ぬまで自分の懐疑論を乗り超えられなかった。

カントを「独断のまどろみ」から覚ましたのは、ヒュームの因果関係についての議論だった。今日まで万有引力で物が落ちたとしても、それは経験的な推測にすぎず、そこから因果関係は帰納できない。物が落ちたという事実を何百回列挙しても、万有引力の法則は証明できないのだ。

カントはこのヒュームの問題に取り組み、それを解いたというが、実際には彼の論証はヒュームの懐疑論で否定されたものだ、とラッセルはいう。ヘーゲル以降の哲学者も、誰ひとりヒュームの逆説を解くことはできなかった。近代哲学はヒュームに始まり、ヒュームで終わったのだ。

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