宇宙とは何か (SB新書)
物理学の観測問題と並ぶ難問として微調整問題がある。これは宇宙の構造を決めるパラメータが、人間の生存に適した値に微調整されているという事実である。

たとえば量子力学のプランク定数はゼロに近いごく小さな定数だが、それがゼロだと電子は原子核に吸い込まれて消滅する。宇宙定数と呼ばれる真空のエネルギー(斥力)は10-123とゼロにきわめて近いが、ゼロだと宇宙は重力で収縮して消滅する。

普通の液体は固体になると体積が小さくなるが、氷は水素結合で中心に六角形の空間ができるため、体積が大きくなって水より軽くなる。こういう物質は自然界には水だけだが、この性質が生命の誕生にとって決定的だった。もし氷が水より重かったら、氷河期には海底から凍ってゆき、海はすべて凍結して生物は死んでしまう。氷が海面に浮いて太陽光を遮断したから、生物は水の中で生きていけたのだ。

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その他にも生物の生存に必要な値をとっているパラメータは少なくとも40あるが、それがなぜその値をとるのか、また互いにどんな関係にあるのかはわからない。それは偶然と考えるしかないが、そんなに多くの微調整が独立に起こる確率はゼロに近い。それを説明する論理が人間原理(anthropic principle)である。

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