世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論
量子力学の観測問題は100年近く前から続く大論争だが、多くの物理学者は関心をもっていない。どう解釈しようと量子力学は100%正確に実験結果を予測できるからだ。しかし茶飲み話としては最適だ。何しろアインシュタインもシュレーディンガーも答を出せなかった問題が未解決のまま残っているのだから、素人が何を言ってもかまわない。

本書もそういう茶飲み話だが、おもしろいのはこれも100年前のレーニンとボグダーノフの論争が出てくることだ。これは論争というよりレーニンが『唯物論と経験批判論』で一方的にボグダーノフを罵倒したものだ。レーニンの議論は唯物論というより素朴実在論で、今では読むに耐えない。

ボグダーノフの議論は、20世紀の科学を変えたマッハの認識論だった。マッハは感覚に先立つ「絶対空間」などの本質を否定し、時間や空間を相対化するアインシュタインの理論のヒントになった。しかしレーニンはこれを「主観的観念論」とののしり、「ボグダーノフが認識する前から世界は存在する」と主張した。

これはばかばかしいようで、反論するのはむずかしい。それはほとんどの人の常識であり、むしろカント以来の「認識が存在に先立つ」という観念論こそ、ほとんどの人に理解できないだろう。

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