自己家畜化する日本人 (祥伝社新書)
自己家畜化(self-domestication)という概念は、18世紀末にドイツの人類学者ブルーメンバッハが提唱したもので、最近は生物学の論文でも使われる学術用語である。野生動物を家畜化して犬や猫に品種改良したように、人間も互いに「品種改良」してきたというアイディアは、キリスト教圏では反発を呼んだが、日本人には受け入れやすい。

霊長類の中でも、人類は群を抜いて多くの個体で集団をつくる生物である。普通は集団が大きくなると紛争が起こるものだが、人類は互いを無害化する自己家畜化によって紛争を防いできた。その方法は、紛争を起こす個体を集団から排除し、子孫をつくらせないことだ。動物の品種改良と同じである。

突然変異のほとんどは遺伝子の異常なので、突然変異だけで環境変化に適応する形質ができるには数千年から数万年かかるが、交配による品種改良で人間に適した動物をつくるのは数十年でできる。石器時代の人類はこうした家畜的な傾向が強く、戦争が少なく、国家も階級もなかった。

しかしこのように家畜的な人々だけで構成されている集団の中に凶暴なオスが生まれると、他の人々を食い物にして集団を支配してしまう。また家畜的な集団と凶暴な集団が戦争すると、家畜的な集団は負けてしまうので、現代にほとんど残っていない。その例外が日本人と北米の先住民である。

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