ホモ・サピエンスの宗教史-宗教は人類になにをもたらしたのか (中公選書 142)
私は2007年からFacebookのユーザーだが、初期はほとんど英語で、海外との連絡に使っていた。宗教を選べというので、Atheist(無神論者)というグループに入ったら「なぜあなたは神を信じないのか」という質問がたくさん来て驚いた。

よくきかれたのは「日本人はモラルが高いが、宗教なしでどうやってモラルを維持しているのか」という質問だった。なるほどアメリカ人にとってモラルは教会で教えるものなのかと意外に感じたが、キリスト教だけを「宗教」と考え、それ以外の信仰を「呪術」とか「アニミズム」とか呼ぶのは自民族中心主義である。

本書も人類史の中で宗教を考え、まずこの通念を否定する。家族を超える共同体を維持するためには、他人と協調して暴力を抑制するモラルが必要で、それなしでは肉体的に貧弱な人類が生き残ることはできなかった。それには言語も宗教も必要ではなく、本質的なのは集団の中で同じものを信じる共感(信仰)である。

ホモ・サピエンスの30万年の歴史の中では、一神教はたかだか3000年前に生まれたもので、その1%ぐらいの短い歴史しかない特殊な信仰形態である。ほとんどの信仰に唯一神はなく、教義もない。キリスト教文明が世界を文化的に支配するようになったのも20世紀以降の現象であり、今後もずっと続くとは限らない。宗教はその社会的基盤を失ったからだ。

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