歴史的類比の思想
ガザをめぐる紛争をみていると、一神教がいかに凶暴で危険な宗教であるかを痛感する。ヨーロッパ人はそれが典型的な「宗教」だと考え、世界の他の信仰をアニミズムとかトーテミズムなどの「呪術」として蔑視したが、これは逆である。最近の人類学も実証したように、枢軸時代までの宗教には、唯一神も教義もなかったのだ。

特に全世界を一つの神が支配するという一神教は古代ユダヤで2500年前に生まれたもので、人類史の中で1回だけの出来事だった。それは特異なユダヤ人の選民思想だったので、他民族には普及しなかったが、1世紀に生まれた「キリスト教」と自称する分派がこの普遍主義をローマ帝国に布教し、世界最大の宗教になった。

今では同じくユダヤ教から派生したイスラム教と合わせて、世界の人口のほぼ半分が一神教である。世界中に数百ある宗教の中で、たった一つの凶暴な宗教が、人類の半分を占めるに至ったのはなぜだろうか。これについてはいろいろな説があるが、田川建三氏は植民地支配だという。

新約聖書はローマ帝国の共通語であるギリシャ語で書かれた。それはユダヤ教とは違い、最初からローマ帝国の領内に布教する普遍宗教として生まれたのだ。最初ローマ帝国はそれを迫害したが、やがてキリスト教を国教とし、広大な帝国を支配するイデオロギーとして利用した。その教義は、植民地支配に最適だったからだ。

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