戦争と交渉の経済学: 人はなぜ戦うのか
ハマスのイスラエルに対する奇襲攻撃で、双方に500人以上の死者が出たといわれている。イスラエルのネタニヤフ首相は「戦争状態だ」と宣言して反撃を開始したので、ハマスの攻撃をはるかに上回る報復が行われるだろう。

こういうニュースをみると、人類はずっと戦争ばかりしてきたようにみえるが、ハマスの攻撃は2021年5月から2年半ぶりである。世界でもっとも危険なパレスチナでも、戦争は例外なのだ。

それは当然である。人類が毎日、戦っていたら、とっくに全滅していただろう。類人猿の中でもチンパンジーはいつも戦っており、集団をつくらない。貧弱な肉体しかない人類が繁栄した最大の理由は、集団の中で戦争を避ける知恵を身につけたからだ。

本書は戦争の原因を次の5つに分類する。
  1. 抑制されていない利益:独裁者の欲望に制約がない
  2. 無形のインセンティブ:金銭的利益を超える名誉や義憤に駆られる
  3. 不確実性:強さを誇示して脅威を大きく見せる
  4. コミットメント:合理的に行動しないことで譲歩を引き出す
  5. 誤認識:敵の実力を過小評価する
平和とは単に戦争がないことではなく、それを維持する双方の努力が必要だ。争いをなくすことはできないので、それが戦いに至らないように当事者が交渉し、妥協することが重要である。

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