電力崩壊 戦略なき国家のエネルギー敗戦 (日本経済新聞出版)
本書の副題は「戦略なき日本のエネルギー敗戦」。エピローグには今の電力危機が「第三の敗戦」だと書いてある。第一の敗戦は日米戦争、第二の敗戦が何かは書いてないが、1990年代の「経済敗戦」だろう。

著者は第一の敗戦と第三の敗戦が似ているというが、第一の敗戦の原因は明らかだ。勝てるはずのないアメリカと戦争を始めたことがすべての原因で、敗戦はその必然的な結果だった。それを今の電力危機と重ねるなら、第三の敗戦の原因は、福島第一原発事故である。このとき津波対策を怠ったことが最大の原因で、事故はその必然的な結果だった。

だから8・15と重なるのは3・11だが、そこからの道筋はまったく違う。8・15ではGHQのダメージ・コントロールで、日本経済はほぼ10年で開戦前の状態に戻った。その最大の原因は、マッカーサーという強力な指導者がいて、日本を冷戦の橋頭堡として再建する明確な戦略があったことだ。

それに対して3・11後の電力自由化は迷走を続け、12年たっても電力インフラは事故前の状態を回復できない。その点では、現状は1990年代の第二の敗戦に似ている。

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