リチャード・クーは日本では忘れられた存在だが、彼の「バランスシート不況」理論はクルーグマンやサマーズなどが高く評価し、日本でも日銀の白川元総裁などが評価している。現在の観点から興味あるのは、黒田日銀が過激な円安誘導で産業空洞化をもたらしたと指摘している点だ。
昔の貿易理論では為替レートは購買力平価で決まり、貿易赤字の国の通貨は弱くなると考えたが、現実には大きな貿易赤字を抱えるアメリカのドルが世界の「一強」になり、ユーロも円も弱くなっている。「正しい為替レート」を決める理論は存在しないが、その動きを説明するのは実質金利の均等化である。
日本の長期金利は2010年代、実質金利でみると、ほぼ一貫してマイナスだった。アメリカの実質金利はこれより2~3%高かったので、投資家は円を借りてドルで投資する。黒田日銀はゼロ金利の円資金を大量に供給したが、これがドルに転換され、円安が進んだ。
この結果、アメリカの「長期金利ー予想インフレ率」に連動して、ほぼゼロ金利だった日本の長期金利が上がった。2021年までは急速なインフレに金利上昇が追いつかなかったので、実質金利は日>米だったが、ウクライナ戦争のころから米>日になって金利差が拡大し、ドル高になった。

日米実質金利差とドル円レート(株式マーケットデータ)
ゼロ金利によって投資機会の少ない日本から、資金需要の旺盛なアジアの新興国に直接投資が増え、製造業の空洞化が起こった。これは黒田総裁にとっては意図せざる結果だった。彼は円安で輸出が増え、景気がよくなると思ったのだが、その逆に貿易赤字になり、円安が続いても企業は帰ってこなかった。
*この記事は2023年に刊行された英語版によるもの。
続きはアゴラサロンでどうぞ(初月無料)
昔の貿易理論では為替レートは購買力平価で決まり、貿易赤字の国の通貨は弱くなると考えたが、現実には大きな貿易赤字を抱えるアメリカのドルが世界の「一強」になり、ユーロも円も弱くなっている。「正しい為替レート」を決める理論は存在しないが、その動きを説明するのは実質金利の均等化である。
日本の長期金利は2010年代、実質金利でみると、ほぼ一貫してマイナスだった。アメリカの実質金利はこれより2~3%高かったので、投資家は円を借りてドルで投資する。黒田日銀はゼロ金利の円資金を大量に供給したが、これがドルに転換され、円安が進んだ。
この結果、アメリカの「長期金利ー予想インフレ率」に連動して、ほぼゼロ金利だった日本の長期金利が上がった。2021年までは急速なインフレに金利上昇が追いつかなかったので、実質金利は日>米だったが、ウクライナ戦争のころから米>日になって金利差が拡大し、ドル高になった。

日米実質金利差とドル円レート(株式マーケットデータ)
ゼロ金利によって投資機会の少ない日本から、資金需要の旺盛なアジアの新興国に直接投資が増え、製造業の空洞化が起こった。これは黒田総裁にとっては意図せざる結果だった。彼は円安で輸出が増え、景気がよくなると思ったのだが、その逆に貿易赤字になり、円安が続いても企業は帰ってこなかった。
*この記事は2023年に刊行された英語版によるもの。
続きはアゴラサロンでどうぞ(初月無料)


