ドイツリスク~「夢見る政治」が引き起こす混乱~ (光文社新書)
川口マーン恵美氏が、最近のドイツが「東ドイツ化」しているという考察をしている。冷戦の終了で西ドイツは東ドイツに勝ったと思っているが、必ずしもそうはいえない。

経済的には西ドイツが圧勝したが、政治的には16年間にわたってドイツの首相を務めたメルケルは東ドイツ出身だった。その後のショルツ政権で主導権を握ったのは緑の党であり、彼らは原発ゼロという社会主義的な政策を30年前から掲げ、今年それを実現してしまった。

これには多分に特殊ドイツ的な要因があり、本書もいうようにドイツ人の自然主義やロマン主義は、ヨーロッパでも他にはみられない。特にドイツ特有なのは、観念を事実より優先する傾向である。原発は悪のエネルギーだという観念で政治が動き、それによって国民が損するかどうかは考えない。

決まったことは一丸となって実行し、反原発というナンセンスな政策を理路整然と説明する。ウクライナ戦争で一時は考え直したかと思ったが、結局は原発ゼロにしてしまった。そしてエネルギー価格は暴騰し、成長率はEUで唯一マイナスになって、またヨーロッパの病人といわれている。

続きは池田信夫ブログマガジンで(初月無料)