国家に抗する社会―政治人類学研究 (叢書 言語の政治)
レヴィ=ストロースは未開社会を平和な「冷たい社会」と考えたが、彼の弟子クラストルは北米の先住民を調査し、それがつねに他の部族と戦っていることを発見した。彼らが平和にみえるのは、国家を拒否して戦争を抑制しているからだ。

部族が生き残るためには、他の部族との戦争を指導する首長が必要だが、彼が王になることは許されない。必要もないのに戦争を始めると他のメンバーは離れ、首長は敵の矢を体中に受けて死ぬ。首長は一方的に命令するのではなく、部族の合意に従わなければならない。

この思想は、最近のグレーバーの「アナーキズム人類学」にも受け継がれている。従来は農耕が国家を生み、それが戦争を生んだと思われていたが、それは逆である。ドゥルーズ=ガタリがクラストルに触発されて書いたように、国家は戦争を抑止するために生まれたのだ。

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