最近、ジェンダーや移民などの差別の話題が日本でも騒がれるようになった。経産省トイレ訴訟で、トランスジェンダーが女子トイレを利用する権利というきわめてマイナーな問題を最高裁が取り上げたのは、LGBT法と並んで日本も「ジェンダー先進国」になろうということだろうが、トランスジェンダーは人口の0.5%程度の超少数派である。
それがこれほど大きな騒ぎになるのは、アメリカからの輸入である。アメリカは移民の国だから人種差別が日常的に起こっており、特に黒人差別は政治の最大の争点である。もう一つは性差別で、女性の社会的地位の問題はほぼ解決したが、ゲイなどの性的マイノリティ(LGBT)に対する差別を糾弾する運動が盛り上がっている。
その背景にはアメリカの価値を破壊しようとするマルクス主義の陰謀がある、というのが本書の見立てで、2020年にBLMが始まったあと出版され、ベストセラーになって100万部以上売れた。中身はまじめに論じるには値しないが、おもしろいのは、ジェンダーや黒人問題が騒がれるようになった背景に、批判理論があるという指摘である。
日本の陰謀論者は「フランクフルト学派」と訳すのでピンと来ないが、これは1960年代に流行した新左翼の理論で、その中心はヘルベルト・マルクーゼだった。彼は左翼の伝統がなかったアメリカにマルクス主義を持ち込み、新左翼のアジテーターになった。それを焼き直したのが、今のジェンダー理論や批判的人種理論(CRT)などの「新しい新左翼」である。
続きは7月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)
それがこれほど大きな騒ぎになるのは、アメリカからの輸入である。アメリカは移民の国だから人種差別が日常的に起こっており、特に黒人差別は政治の最大の争点である。もう一つは性差別で、女性の社会的地位の問題はほぼ解決したが、ゲイなどの性的マイノリティ(LGBT)に対する差別を糾弾する運動が盛り上がっている。
その背景にはアメリカの価値を破壊しようとするマルクス主義の陰謀がある、というのが本書の見立てで、2020年にBLMが始まったあと出版され、ベストセラーになって100万部以上売れた。中身はまじめに論じるには値しないが、おもしろいのは、ジェンダーや黒人問題が騒がれるようになった背景に、批判理論があるという指摘である。
日本の陰謀論者は「フランクフルト学派」と訳すのでピンと来ないが、これは1960年代に流行した新左翼の理論で、その中心はヘルベルト・マルクーゼだった。彼は左翼の伝統がなかったアメリカにマルクス主義を持ち込み、新左翼のアジテーターになった。それを焼き直したのが、今のジェンダー理論や批判的人種理論(CRT)などの「新しい新左翼」である。
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