1930年代の大恐慌を解決したのは、ルーズベルト大統領のニューディールだったと思われているが、これは正しくない。大恐慌を1933年までの前半とそれ以降の後半にわけると、前半の金融危機の原因は、アメリカが金本位制を守るために金利を上げ、通貨供給を絞ったことだった。これはFriedman-Schwartzの名著に書かれている通りである。
ルーズベルトが金本位制から離脱し、金融を緩和したことで銀行の連鎖倒産は終わり、アメリカ経済は最悪期を脱したが、図のように1936年からまた不況になり、失業率も上がった。

1930年代のアメリカの一人あたりGDPとトレンド(Wikipedia)
その原因には諸説あるが、ルーズベルトはケインズ理論を知らず、財政支出はGDPの5%程度で、フーバー大統領の時代と大して変わらなかった。Christina Romerは、この時代についての経済史的な研究をまとめて「1930年代からの重要な教訓の一つは、小さな財政拡張の効果は小さいということである」と結論している。
ではアメリカ経済を回復させたのは何か。それはクルーグマンも指摘するように第2次大戦による巨額のバラマキ財政だろう。多くの若者が戦争に「雇用」され、軍需生産で需要不足が解消されたのだ。上の図でもわかるように、アメリカのGDPが1920年代からのトレンドに戻ったのは、第2次大戦の始まった1942年だった。
大恐慌のような金融危機は、複数均衡の中の「悪い均衡」にトラップされた状態なので、ちょっとした財政刺激では動かない。その意味では、2010年代の長期停滞も、単に財政赤字が少なすぎたのかもしれない。それが2020年以降のコロナ対策の大規模なバラマキで「よい均衡」にジャンプしたとすれば、この状況は意外に長続きするかもしれない。
続きは6月19日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)
ルーズベルトが金本位制から離脱し、金融を緩和したことで銀行の連鎖倒産は終わり、アメリカ経済は最悪期を脱したが、図のように1936年からまた不況になり、失業率も上がった。

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その原因には諸説あるが、ルーズベルトはケインズ理論を知らず、財政支出はGDPの5%程度で、フーバー大統領の時代と大して変わらなかった。Christina Romerは、この時代についての経済史的な研究をまとめて「1930年代からの重要な教訓の一つは、小さな財政拡張の効果は小さいということである」と結論している。
ではアメリカ経済を回復させたのは何か。それはクルーグマンも指摘するように第2次大戦による巨額のバラマキ財政だろう。多くの若者が戦争に「雇用」され、軍需生産で需要不足が解消されたのだ。上の図でもわかるように、アメリカのGDPが1920年代からのトレンドに戻ったのは、第2次大戦の始まった1942年だった。
大恐慌のような金融危機は、複数均衡の中の「悪い均衡」にトラップされた状態なので、ちょっとした財政刺激では動かない。その意味では、2010年代の長期停滞も、単に財政赤字が少なすぎたのかもしれない。それが2020年以降のコロナ対策の大規模なバラマキで「よい均衡」にジャンプしたとすれば、この状況は意外に長続きするかもしれない。
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