雇用、金利、通貨の一般理論 (日経BPクラシックス) (NIKKEI BP CLASSICS)
株式市場は「バブル後最高値」の更新にわいている。その最大の原因は景気回復だが、その原因は金融政策ではない。90年前にケインズが指摘したように、ゼロ金利状況では金融政策はきかないが、財政政策はきくのだ。

それは植田総裁の示したニューケインジアン・フィリップス曲線(NKPC)でも明らかだ。アベノミクスで激しく量的緩和をやった2013~19年にはほぼ横に寝ていた曲線が、コロナで100兆円の財政バラマキをやった2020年から急角度になり、22年のウクライナ戦争以後、激しいインフレになった。

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最近のインフレは、黒田氏の考えていた期待インフレ率の上昇によるものではない(これは彼も認めた)。黒田日銀は、初期には毎年50%以上もマネタリーベースを増やしたが、市場に流通するマネーストックは次の図のように3%ぐらいしか増えなかった。

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マネタリーベースとマネーストックの前年比増加率(%)日銀調べ

これは「ゼロ金利ではいくらマネタリーベースを増やしても、通貨需要が増えないとインフレにはならない」という日銀流理論の通りで、「マネタリーベースを増やせば期待インフレ率が上がってインフレになる」という黒田理論は反証された。

ところが2020年からマネーストックが激増し、前年比8%増になった。その最大の原因は、100兆円以上のコロナ対策である。コロナ補助金や給付金などのバラマキで資金需要が増え、インフレになったのだ。リフレ派も「期待派」も間違っていたが、ケインズは正しかった。

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