アメリカ議会の債務上限問題は、デッドラインが近づいて緊迫している。今のままだと6月1日に連邦政府の債務が上限に達して国債が発行できなくなるので、バイデン大統領が予算を組み替えて債務を削減するか、共和党が債務の上限を引き上げるかしかないが、実はそれ以外に2つの「裏技」がある。

一つは合衆国憲法修正14条4項の「合衆国の法律で認められた公的債務の効力は争うことができない」という規定を使うものだ。これを使えば連邦政府は無限に借金できるので、上限を超えても国債を発行できる。サンダース上院議員などの左派は、これを使って今の予算のまま国債発行を続けるべきだと主張している。


もう一つは、連邦政府が国債の代わりに1兆ドル硬貨を発行し、これをFRBが買い取って資金を提供する方法だ。政府はFRBの発行したドルで行政サービスを続けられる。この硬貨は市場で流通しないので、政府紙幣でもデジタル信号でもいいが、今のところ連邦政府は否定している。


このうち日本にも応用できるのは、第二の方法である。いま国会で防衛費の財源が問題になっているが、これを解決するには増税も国債も必要ない。もし1兆円の財源が必要なら、政府が1兆円紙幣を発行し、それを日銀が買い取ればいいのだ。

これは現行法で可能で、2003年にスティグリッツが日本で提言した。紙幣は返済する必要がないので政府債務は増えず、金利もつかない。増税の必要もなく、防衛費は簡単にまかなえる――MMTは大喜びしそうだが、このアイディアには落とし穴がある。

続きは5月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)