原著の出版から78年たって新訳が出たが、本書の最初のタイトルは『三人の偽予言者:プラトン、ヘーゲル、マルクス』だったらしい。そっちのほうが中身をよくあらわしているが、プラトンの部分(岩波文庫版1・2分冊)は文献学的に間違いだらけで、とても読めたものではない。
後半(3・4分冊)はヘーゲルやマルクスを「開かれた社会の敵」として糾弾するが、ポパーがドイツ哲学を理解していないので、批判として成り立っていない。彼が弁証法に対置したのは反証理論だが、これは素朴な科学主義で、のちにクーンのパラダイム理論で反証された。
理論が事実で棄却されるわけではない。コペルニクスが地動説を唱えてからも、天動説は200年以上、定説だった。ポパーの信奉者だった日銀の黒田前総裁も、インフレ目標が反証されても量的緩和を放棄しなかった。
最近の天動説は、西浦博氏の予言である。彼は2020年3月の専門家会議で、100日で国民の80%が感染するオーバーシュートが起こるという予想を発表した。これが正しいと約1億人がコロナに感染するので、致死率1%とすると100万人が死亡する。
基本再生産数Ro=2.5の場合の重篤患者数(専門家会議)
その数字を厚労省が隠したので、彼は4月にゲリラ的に記者会見して「何もしないと42万人死ぬ」と発表したが、100日後のコロナ死者は累計で約900人。西浦モデルは明らかに反証されたのだが、彼はその誤りをいまだに認めない。すべての科学理論は政治的なのだ。
続きは5月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)
後半(3・4分冊)はヘーゲルやマルクスを「開かれた社会の敵」として糾弾するが、ポパーがドイツ哲学を理解していないので、批判として成り立っていない。彼が弁証法に対置したのは反証理論だが、これは素朴な科学主義で、のちにクーンのパラダイム理論で反証された。
理論が事実で棄却されるわけではない。コペルニクスが地動説を唱えてからも、天動説は200年以上、定説だった。ポパーの信奉者だった日銀の黒田前総裁も、インフレ目標が反証されても量的緩和を放棄しなかった。
最近の天動説は、西浦博氏の予言である。彼は2020年3月の専門家会議で、100日で国民の80%が感染するオーバーシュートが起こるという予想を発表した。これが正しいと約1億人がコロナに感染するので、致死率1%とすると100万人が死亡する。
基本再生産数Ro=2.5の場合の重篤患者数(専門家会議)
その数字を厚労省が隠したので、彼は4月にゲリラ的に記者会見して「何もしないと42万人死ぬ」と発表したが、100日後のコロナ死者は累計で約900人。西浦モデルは明らかに反証されたのだが、彼はその誤りをいまだに認めない。すべての科学理論は政治的なのだ。
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