日銀の植田総裁は、黒田総裁の路線を継承して手堅いスタートを切った。ゼロ金利では日銀の仕事は金利調節ではなく統合政府の債務管理になったので、短期的な需給ギャップとは異なる長期的な観点から財政を見直してはどうだろうか。

経済学にクラウディングアウト(締め出し)という概念がある。これはマネタリストがケインズ理論を批判して「財政赤字が民間投資を締め出す」という意味で使ったもので、財政赤字が増えると金利が上がって民間投資が減るという意味だ。

これはゼロ金利では意味のない概念になったと思われていたが、超長期で考えると政府投資と民間のトレードオフは成り立つ。それは次のようなFTPLの均衡条件で説明できる。

 物価水準=名目政府債務/財政黒字の現在価値(*)

ここで右辺の分母は厳密にいうと「無限の将来にわたるプライマリー黒字の割引現在価値」なので、財政赤字が増える(黒字が減る)と小さくなり、左辺の物価が上がる。財政赤字を減らすと右辺の分母が大きくなり、物価が下がる。つまり緊縮財政でデフレになるのだ

これは短期的な需給ギャップではなく、投資家の予想が変わるからだ。直感的にいうと、緊縮財政で政府が過剰に信用されるハイパーリカーディアンな状態になり、ゼロリスクの国債が民間投資より魅力的になって、民間投資をグラウドアウトするのだ。これを利用して、緊縮財政をやめれば「政府の借金」を減らすことができる。

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