最近よく気候正義という言葉が使われる。これを主張したスピーチとして有名なのは、グレタ・トゥーンベリの2018年の国連演説だろう。



彼女は二つのの「正義」を主張している。先進国はこれまで温暖化ガスを排出して地球を汚染してきたが、その被害をこうむっているのはグローバルサウスの途上国だ。そして地球を汚染してきたのは大人だが、その被害は自分のような将来世代が受ける。この状況は正義ではない。

この議論でよく出てくるのは次の図である。世界でもっとも豊かな10%の人々が、世界のCO2の半分を出しており、世界の50%を占める貧困層が排出するCO2は、全体の10%に過ぎない。

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FoEの資料

市場経済には大気のような公共財の質を維持する機能はないので、それを超える正義が必要だ。加害者の先進国が、被害者の途上国に賠償しなければならない――それが昨年のCOP27で合意された損害と賠償の原則である。

皮肉なことに、COPの議論でわかったのは、最大の汚染源である先進国の温暖化による被害はほとんどなく、洪水や干魃などの被害は熱帯の途上国に集中しているという事実だった。したがって正義を実現する上でもっとも効果的なのは、グローバルサウスに開発援助して、インフラを整備することである。

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