4月からアゴラ経済塾「グリーン経済学への招待」がスタートする。これはイデオロギー闘争になりがちな気候変動の問題を、経済学でドライに考えようというものだが、世の中には依然としてイデオロギーで科学を倒そうとする人が多い。

「論座」で昨年12月から連載された明日香寿川氏の記事もその一つだ。これは私の記事だけを対象に5回も連載された長大な論文で、その並々ならぬ情熱には頭が下がるが、残念ながら日本語が不自由で、逐一反論する価値はない。かいつまんで反論しておこう。

彼が攻撃するのは、私が昨年1月にアゴラに書いた「グーグル日本法人への公開質問状」である。この内容は2020年のアゴラこども版で、地球環境の専門家なら誰でも知っている常識だが、グーグルも明日香氏も知らないらしい。次の図についての私は次のように説明した:
「完新世」というのは今から1万1700年前に氷河期が終わり、人類が定住し始めた時代ですが、地球の平均気温もその時期に大きく上がっています。でも1万年前に人間の出すCO₂は微々たるものだったので、この図は地球温暖化が始まった原因は人間活動ではなかったことを証明しています。その逆に、温暖化で大気中のCO₂が増えたのです。



これに対して、明日香氏は次のように反論する。
まず論理的な問題がある。「過去は人間が少なくてCO₂排出も小さかった」ということから、「今起きている急激な気温上昇は人間活動によるものではない」という結論は導くことはできない。なぜなら、過去の気温上昇のメカニズムと現在の気温上昇のメカニズムが同じと断定することはできないからだ。

これは問題のすりかえである。私は1万年前に地球温暖化が始まった原因は人間活動ではなかった(したがって温暖化には人間活動以外の影響が大きい)と書いているのに、明日香氏は今起きている急激な気温上昇が人間活動によるものではない、と勝手に話をすりかえて、藁人形をたたいている。論理的な問題があるのはどっちだろうか。

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