シリコンバレー銀行(SVB)から始まったアメリカの金融危機は、東部のシグネチャー銀行にも飛び火し、連邦預金公社(FDIC)は両社を預金封鎖した。欧州でもクレディ・スイスの経営危機説がささやかれている。

しかし日本には、今のところ信用不安はない。むしろSVB危機のおかげでFRBの利上げ観測が弱まり、相対的に安全な日本国債の買いが広がって、長期金利が0.24%まで低下したが、長期的な影響はまだわからない。

世界的に過剰債務が積み上がっている中で、金利が上がると中堅銀行から破綻するのは、2008年と同じパターンである。理由は簡単で、預金金利(短期)と貸出金利(長期)が逆鞘になるからだ。

それ自体は期間収益を悪化させるだけだが、「SVBが危ない」という噂がSNSで飛びかうと預金が引き出され、銀行がそれに応じるために(値下がりした)長期債を売却すると、大きな売却損が出る。その噂が出回るとさらに預金が引き出される取り付けが起こる。

これはDiamond-Dibvigの指摘した複数均衡で、みんなが危ないと思えば危なくなる自己実現的な性質をもつ。銀行は信用創造で預金を大幅に上回る融資をしているので、すべての預金が一挙に引き出されると破綻するのだ。

だから金融危機をなくすのは簡単である。法定準備率を100%に上げ、すべての銀行をナローバンクにして信用創造を禁止すればいいのだ。これは1930年代にフィッシャーやフリードマンの提案した改革である。

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