ロングテール‐「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
本書は、インターネットが経済システムに及ぼす本質的な影響を考える際の必読書である。特に興味あるのは、著者がロングテールを静的な分布としてだけではなく、技術や市場とともに変化する現象としてとらえていることだ。

ロングテールはベキ分布y=x-kで近似でき、これを対数グラフlog y=-klog xであらわすと、次のような右下がりの曲線になる。ベキ指数kは、この直線の傾きであり、これを変えることで分布の形が変わる。

たとえばアマゾンで売れる本の順位を横軸に、売れる数を縦軸にとると、次の図のようにベストセラー(左端)のヘッドは高いが、あまり売れない本のテールも長い。

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ベキ分布

インターネットなどによる取引費用(特にサーチコスト)の低下は、テールの右端を伸ばし、その傾きをフラットにして、市場の重点をヘッドからテールへとシフトさせるのだ。

ロングテールのもう一つの特徴は、それが自己相似的だということである。これは、ロングテールがフラクタル図形であることを示している。たとえば音楽サイトのアクセス数のデータでは、ベキ分布は一つのジャンルをとっても見られるし、Aで始まる曲だけをとっても見られる。

こうした細かい分類をすればするほどkは大きくなり、逆にカテゴリーをまとめてマクロに見ると、A、B、C...で始まる曲のアクセス数はランダム(正規分布)になる。全体に見られるkの値は、マクロとミクロの中間になる。

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