日銀が保有する国債に、昨年末時点で約8.8兆円の評価損が出た。これは最近のYCC修正にともなう日本国債の空売りに対して、価格維持のために日銀が今月だけで23兆円も国債を買い入れたことが大きな原因である。

日銀の純資産は4.7兆円、引当金が7.5兆円あるので、実質的な自己資本は12.2兆円。あと3.4兆円以上の評価損が出ると、バランスシート上は債務超過になるが、日銀は保有国債の評価方法として償却原価法(簿価)を採用しているので、評価損が発生しても期間損益には影響しない。

問題は短期金利である。日銀当座預金の残高は563兆円。今はゼロ金利だが、これが長期金利0.5%以上になると、日銀の保有国債と逆鞘になる。1%ポイントの逆鞘が発生すると、毎年5.6兆円の損失がキャッシュで発生し、3年で本物の債務超過になる。これは政府が資本増強する必要があるが、その規定が日銀法にはない。

本質的な問題は、民間金融機関にある。民間にも日銀と同規模の評価損が発生する。こっちは時価会計なので、1998年のような取り付けが起こるおそれがある。これは預金保険機構が救済し、その損失を一般会計で埋めるしかないが、このとき統合政府の支払い能力に疑念が生じると、25年前より深刻な金融危機が起こる可能性がある。

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