東京都や大阪府が大学を無償化するが、この問題についての経済学者の意見はほぼ一致している:大学教育の私的収益率はきわめて高いが、社会的には浪費である。大卒で高い所得を得られるのは教育で能力が上がるからではなく、学歴のシグナリング効果である。これは親が子供にアクセサリーを買ってやるのと同じなので、公的支援は正当化できない。
本書はこういう理論・実証研究をまとめたもので、原題は『教育に反対する理由』。大学教育の収益率は明らかにマイナスだが、高校教育も(それに投じられる公費以上に)役に立つ証拠がない。小中学校は役に立つので、その外部性(誰もが字を読めるなど)を考えると公的投資は正当化できるかもしれない。
先進国でも途上国でも、教育投資と成長率は無関係である。20代前半まで多くの子供が学校に行くのは、社会的には大きな損失である。多くの途上国では子供は10代前半から働くが、学校教育の長さとGDPに有意な相関はみられない。
ほとんどのスキルは職場で身につけるので、学校教育は効率的ではないが、多くの人が子供への教育投資を増やしているので、世界中で学歴のインフレが拡大している。欧米では修士以上でないとエリートになれないが、学歴エリートの労働者としての能力は低い。
だから大学無償化は、そのねらいとは逆の結果をもたらす。子供を大学に進学させる親は平均より豊かなので、所得は逆分配になる。学歴のインフレが激しくなり、必要のない子供が長期間、教育を受けるので効率は落ちる。これに比べれば、非裁量的な児童手当のほうがましだ。
続きは2月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)
本書はこういう理論・実証研究をまとめたもので、原題は『教育に反対する理由』。大学教育の収益率は明らかにマイナスだが、高校教育も(それに投じられる公費以上に)役に立つ証拠がない。小中学校は役に立つので、その外部性(誰もが字を読めるなど)を考えると公的投資は正当化できるかもしれない。
先進国でも途上国でも、教育投資と成長率は無関係である。20代前半まで多くの子供が学校に行くのは、社会的には大きな損失である。多くの途上国では子供は10代前半から働くが、学校教育の長さとGDPに有意な相関はみられない。
ほとんどのスキルは職場で身につけるので、学校教育は効率的ではないが、多くの人が子供への教育投資を増やしているので、世界中で学歴のインフレが拡大している。欧米では修士以上でないとエリートになれないが、学歴エリートの労働者としての能力は低い。
だから大学無償化は、そのねらいとは逆の結果をもたらす。子供を大学に進学させる親は平均より豊かなので、所得は逆分配になる。学歴のインフレが激しくなり、必要のない子供が長期間、教育を受けるので効率は落ちる。これに比べれば、非裁量的な児童手当のほうがましだ。
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