アイヌと縄文: もうひとつの日本の歴史 (ちくま新書)
アイヌは先住民族かという問題がちょっと話題になっているが、この答は自明である。本書もいうように、縄文人は1万3000年前から日本列島にいたが、それが北方のオホーツク人と混血したアイヌが出てきたのは、いくらさかのぼっても縄文後期の続縄文時代(2300年前~)である。

アイヌは民族というより文化であり、縄文人が弥生人と同化した後も独自の言語を守った。「アイヌ文化期」と呼ばれるのは13世紀以降だが、この時期にアイヌが生まれたわけではない。彼らは北海道に残って弥生人との同化を拒否した縄文人なのだ。

だから現在のアイヌから縄文人の生活を推測できる。その最大の特徴は贈与と返礼を大事にし、商品交換をきらうことだ。贈与は自分の余剰生産物を贈って返礼を求める共同作業であり、相手は同じ部族の中に限られる。それに対して商品交換は他の部族との間で行われ、両者は厳密に区別されていた。

9世紀以降の「擦文時代」と呼ばれる時期には、北海道のアイヌは本州の和人との間に中立地帯を設けて取引をおこなった。たとえば毛皮を米と交換するとき、アイヌは中立地帯の同じ先祖をもつ親族に毛皮を贈与し、その親族は婚姻関係をもつ和人に贈与し、その逆のルートで和人はアイヌに米を贈与した。直接交換すれば簡単なのに、なぜこんな奇妙な取引をしたのだろうか。

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