野口和彦氏の「戦争はギャンブルだ」というコメントが、国際政治学界隈で論議を呼んでいる。

これが「ウクライナの戦争もギャンブルだからやめろ」と受け取られているようだが、戦争がギャンブルだという話は、クラウゼヴィッツを持ち出すまでもなく当たり前だ。サンクコスト(埋没費用)を意識しなかったら、戦争は起こりえない。領土という概念が、サンクコストだからである。

サンクコストは不合理だというなら、領土も不合理である。歴史上のあるとき、ある国家の支配下にあった地域に国境線を引いて「この中はわが国だ」という主張に、論理的な根拠はない。しかしそういう既得権を認めないと、際限なく侵略とその報復が繰り返されるので、1928年の不戦条約で「これまで獲得した領土を既得権と認め、今後の戦争は侵略とみなす」というルールが決まった。

ロシアの侵略はそのルール違反だが、戦争はチキンゲームなので、ウクライナ人が(合理的に)サンクコストを守らないで逃げたら、ロシア人はつねに攻撃し、ウクライナ人はつねに支配されることがナッシュ均衡になってしまう。歴史上そういう「平和主義」の民族は、ほとんど滅亡した。日本人は数少ない例外だろう。

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