消費減税は貴重な社会保障財源を減らす愚策だが、財源には対応策がある。日銀のバランスシートから国債を消せばいいのだ。その方法として今まで提案されたのは次の3つである。
  1. 日銀が償還を求めないと宣言する
  2. 政府が国債を永久債で借り替える
  3. 政府が財政赤字を増やしてインフレ税をかける
1は日銀が保有国債の償還を求めないで、すべて塩漬けにするものだ。これは国債を日銀券に置き換えるだけなので、国民がすべて合理的なら、ほとんど何も起こらない(ややインフレになる)というのがブイターの理論である。

日銀が正式に債権放棄すると減損処理が必要になるので、暗黙の約束でいい。今でも満期までに売却することはないので、これは日銀が正直になるだけだ、というのがターナーの黒田総裁への提案だった。

「ヘリコプターマネー」は永久国債と同じ

2はターナーがヘリコプターマネーという奇抜な名前で提案して話題になったが、これはもともとフリードマンの言葉で、それほど奇想天外な話ではない。玉木氏の提案も論理は同じである。

政府が消費減税の財源を永久債で発行し、日銀がそれを全額買い取ってBS上で返済不要の債権として計上し、実質的にBSから消す。金利はどっちみち国庫納付金として政府に返すので、統合政府で考えると無利子と同じだ。ただ債券格付けが下がり、海外ファンドが「日本政府は債務返済を放棄した」といってアタックしてくるリスクがある。

3はシムズの提案で、政府が「財源なき消費減税で財政赤字を増やす」と宣言し、意図的に政府の信認を毀損してインフレを起こせば実質債務のデフォルトができる。政府債務は1300兆円もあるので、消費減税13兆円を相殺するには1%のインフレ増税で十分だ。

消費減税はインフレ増税

以上を理論的に整理すると、FTPL方程式で統合政府債務(国債+日銀券)を考え、

 物価水準=名目政府債務/実質政府資産

のうち、1と2は国債を返済不要にして右辺の分子(名目政府債務)を消すものだ。しかし債券市場が政府の返済能力に疑問を抱くと金利が上がり、名目債務が増えてインフレ・スパイラルに入る可能性がある。

3はこのスパイラルを逆用し、財政赤字を増やして右辺の分母(財政黒字の割引現在価値)を減らし、左辺の物価を上げてインフレにするものだ。これは普通の増税の代わりにインフレ税をかけ、統合政府の債務をinflate awayする。

老人が7割も保有している預金にも課税でき、マクロ経済スライドで毎年7兆円も過払いになっている年金債務も減価するので、社会保障財税を再建する秘密兵器である。ハイリスク・ハイリターンだが、いずれにせよ消費減税は増税なのだ。