家畜化という進化ー人間はいかに動物を変えたか
人間と類人猿をわける最大の特徴は言葉が使えるか否かだが、これは明らかに遺伝である。その原因も最近は特定され、FOXP2という遺伝子(塩基配列)と関連があることがわかっている。人間とチンパンジーのDNAでは、FOXP2の配列に2ヶ所の違いがあるのだ。

他方、家畜化(domestication)に関連するBAZ1Bと呼ばれる遺伝子があることも、最近わかってきた。これは神経堤幹細胞に関連し、家畜には少ない。人間でも、ある種の発達障害(ウィリアムズ症候群)の人には少ないが、彼らは極端に社交的で、お人好しでおしゃべりだ。

人類(ホモ・サピエンス)がネアンデルタール人との競争に勝った原因は言語だといわれていたが、最近、ネアンデルタール人の遺伝子にFOXP2が発見された。つまりネアンデルタール人も言葉を話す能力をもっていた可能性が高いが、BAZ1Bは他の霊長類と同じだった。

ところが人類のBAZ1Bには変異がみられ、これが自己家畜化と関連があると思われる。人類が生存競争に勝った原因は言語ではなく、自己家畜化による集団生活だったのかもしれない。言葉は一人で使っても役に立たないからだ。

他人と仲よくなるBAZ1Bの変異で、集団生活できるようになったホモ・サピエンスが、言葉でコミュニケーションするようになり、それが文化を生んで集団の結束力が強まり、自己家畜化がさらに進む…というループが起こったのかもしれない。

続きは11月28日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)