アゴラの野口和彦氏の記事が、ちょっと論議を呼んでいる。

これはチキンゲームの状況である。次のペイオフ行列の数字はNATOの利益を示し、ロシアも対称とする。ロシアが核攻撃してNATOが核で報復する左上の状態(第3次世界大戦)は最悪で、双方とも譲歩する右下の状態がベストだが、いずれもナッシュ均衡(安定した状態)ではない。相手が譲歩するチキンだとわかっていれば、攻撃することが最適戦略だからである。


ナッシュ均衡は二つある。もしバイデンがチキンだとプーチンが知っていれば核攻撃し、NATOは報復しない。ウクライナ戦争はロシアの勝利に終わり、世界大戦は避けられる。これが右上の状態である。他方、NATOが報復し、ロシアが譲歩した場合(左下)でも世界大戦は避けられる。

戦争を安全保障のジレンマとして語ることが多いが、これは誤りである。囚人のジレンマにはナッシュ均衡(支配戦略)は一つしかないので、つねに攻撃することが最適で、それを避ける戦略は(1回の戦争では)存在しない。戦争は、どっちかがチキンになれば終わるチキンゲームなのだ。

ランガムも指摘するように、こういうチキンゲーム的な状況は、霊長類でも普遍的である。ニホンザルもゴリラも、弱い猿は強い猿に従い、強い猿は食物などを弱い猿に分配する。猿山のような秩序は不平等だが、オス同士が争うと群れが崩壊してしまうので、弱い猿は一生チキンを演じることが最適なのだ。

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